国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)

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内容(「BOOK」データベースより)

ロシア外交、北方領土をめぐるスキャンダルとして政官界を震撼させた「鈴木宗男事件」。その“断罪”の背後では、国家の大規模な路線転換が絶対矛盾を抱えながら進んでいた―。外務省きっての情報のプロとして対ロ交渉の最前線を支えていた著者が、逮捕後の検察との息詰まる応酬を再現して「国策捜査」の真相を明かす。執筆活動を続けることの新たな決意を記す文庫版あとがきを加え刊行。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
佐藤 優
1960(昭和35)年生れ。’85年、同志社大学大学院神学研究科修了の後、外務省入省。在英日本国大使館、ロシア連邦日本国大使館などを経て、’95(平成7)年から外務本省国際情報局分析第一課に勤務。2002年5月、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。’05年2月執行猶予付き有罪判決を受け、現在上告中。主な著書に『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』(第59回毎日出版文化賞特別賞)、『日米開戦の真実―大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解く』、『自壊する帝国』(第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞)、『獄中記』などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

鈴木宗男事件のことあんまり知らないから、当時のマスメディアの反応とかリアルに覚えていたら、もっと楽しめたり興味深く読むことができたのかもしれない。
個人的には、自壊する帝国のほうが好き。だけど、この作品も面白く読むことができた。

「しかし、僕が悪運を引き寄せた面もある。今まで、普通に行われてきた、いな、それよりも評価、奨励されてきた価値が、ある時点から逆転するわけか」
「そういうこと、評価の基準が変わるんだ。なんかハードルが下がってくるんだ」(366p)

あなたも鈴木さんも政治犯だ。あなたや鈴木さんは二〇〇〇年までの日露平和条約締結という目標のためにはどんな手段も使っていいと考えた。もしそれが成功していれば、鈴木先生は英雄だったし、鑑定入りし、あなたもおそらく鈴木さんと一緒に鑑定に入っていただろう。しかし、平和条約はできず、しかもあなた達は戦争に敗れた。だからつかまった。(445p)

『国民の知る権利』とは正しい情報を受ける権利も含みます。正しくない情報の集積は国民の苛立ちを強めます。閉塞した時代状況の中、『対象はよくわからないが、何かに対して怒っている人々』が、政治扇動家(デマゴーグ)に操作されやすくなるということは、歴史が示しています。(495-496p)