愛の試み

愛の試み (新潮文庫)

愛の試み (新潮文庫)

出版社の説明文より

〈人が生きる本質的な基盤として孤独があり、愛とは運命によってその孤独が試みられることに対する人間の反抗に他ならない。〉と考える著者が、愛と孤独についての一切の妥協を排した思索の跡を綴るエッセイ。挿話として掌編小説9編を併録する。人間を豊かにする愛の諸相を分析し、また愛の陥り易い錯覚にも鋭い視線を向けて、愛の問題に直面する人々に多くの示唆と力を与える名著。

福永さんの文章は、読んでいて気持ちのいい優しい文章で読み心地がいいので好き。
草の花を読んだ後、エッセイ(挿話として掌編小説がいくつか入っているけど)とは知らずに購入。
150ページぐらいの本なのに、読むのに結構時間がかかってしまい、最近読むペースが落ちているなぁと改めて感じた。

――自分は嫌われていたのではなかった。自分が愛する以上に、娘は自分のことを愛していたのだ。口癖のように嫌いといったのは、好きだということの裏返しの言い方だった。(148p)

ツンデレですねわかります。



死を前提とした愛は、なるほど見た目には美しいかもしれないが、現実としては少しも美しくはない。それは文学として美しいだけで、もし文学的な美しさを実演するために死を求めるか、それとも生きて調和に程遠い愛で我慢するかとなったなら、人はもちろん生きるほうを選ぶだろう。(122p)

自己を犠牲にすることから人間的な愛は生まれない。なぜなら人は誰しも、自己を生かすように生まれついているのだし、自己が正しく生きなければ相手もまた生きているとはいえないのだから。(134p)