創造者

創造者 (岩波文庫)

創造者 (岩波文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
詩人として出発したボルヘス(一八九九‐一九八六)がもっとも愛し、もっとも自己評価の高い代表的詩文集。内的必然にかられて書かれた作品の随所に、作者の等身の影らしきものや肉声めいたものを聞くことができる、ボルヘスの文学大全。一九六〇年刊。

詩は、あまり読んだことがないので、個人的にやたらと難しそうという苦手意識を持っていたが、そうでもないかもしれないと思った。
下に注のために空けられたスペースがあり、1ページあたりの文字数が少ないので読みやすい。
この作品集に収められている詩や散文は、一篇一篇が短く、ボルヘスの作品としては、比較的わかり易い感じがする。

気に入った作品は、
覆われた鏡
Argumentum ornitihologicum ――鳥類学的考察
死者たちの会話
黄色い薔薇
王宮の寓話
ボルヘスとわたし
天恵の歌
象棋

忘却によって消し去られるか、記憶によって変化させられるかしないものは、地上には一つとして存在しないのだから。(64p)変化

文学の始まりには神話があり、同様に、終わりにもそれがあるのだ。(67p)セルバンテスドン・キホーテの寓話

本質的なものは常に失われる。それは
霊感にかかわる一切のことばの定めである。(117p)月

彼の世界には名前も過去も
未来もなく、あるのは確実な瞬間だけだ(131p)別の虎

目覚めとは夢みていないと夢みる
別の夢であり、わたしたちの肉が
恐れる死は、夢と人が呼んでいる、
あの夜ごとの死だと感じる。(177p)詩法

神が指し手を、指し手が駒を動かす。
神の背後にいかなる神がいて、塵と時間、
夢と苦悶のからくりを編み出したのだろう?(104-105p)象棋