宇宙創成〈下〉

宇宙創成〈下〉 (新潮文庫)

宇宙創成〈下〉 (新潮文庫)

20世紀末、ついにビッグバンの証拠が。理系必読、文系大興奮の科学ドラマ! 宇宙の産声は人類に届いていた。

人は宇宙を知るため、数限りない挑戦を続けてきた。太陽中心モデルを作り上げたアリスタルコスから、相対性理論アインシュタイン、宇宙誕生の瞬間を発見したNASAに到るまで。決闘で鼻を失った天文学者がいた。世界トップクラスの天体画像分析チームを率いた「メイド」がいた。数々のドラマの果てに、ついに科学者たちは……。人類の叡智の到達点を、感動的に描く圧巻の書。『ビッグバン宇宙論』改題。

目次
第IV章 宇宙論の一匹狼たち
宇宙から原子へ/最初の五分間/宇宙創造の神の曲線/定常宇宙モデルの誕生
第IV章のまとめ
第V章 パラダイム・シフト
時間尺度の困難/より暗く、より遠く、より古く/宇宙の錬金術/企業による宇宙研究/ペンジアスとウィルソンの発見/密度のさざなみは存在するのか
第V章のまとめ
    エピローグ
謝辞
付録■科学とは何か?――What Is Science?
用語解説
訳者あとがき
文庫版訳者あとがき


上巻感想
上巻を読んでから時間が経っていたので、最初のほうは、つながりをよく覚えていなかったので少し読むのが遅くなったけど、ある程度思い出してきたらとても面白くてすらすらと読むことができた。
ビッグバンモデルの最大の対抗論の定常宇宙モデルが、『夢の中の恐怖』という映画からインスピレーションを得たとは知らなかったのでその話は興味深かった。
結局支持していた説は間違っていたけれど、ホイルは、この本の中で描写されている人物の中では、個人的には1・2番を争うくらい魅力のある人物だと思う。
アルファーは、重大な発見をしたのにあまり認められていなかったのがかわいそう。
ガモフとホイルのお互いにラジオや自分の著作などでの茶化しあいみたいなエピソードが面白かった。

(エディトンの著作中の文からの孫引き)
 この話は、どこまで信じるべきなのだろうか?科学にはショールームと工房がある。今日の大衆は――私は中心からそう考えているのだが――検査済みの製品が並べられているショールームをみて回るだけでは満足せず、工房で何が行われているかを知りたいといっているのだ。工房に入るのはかまわない。しかしそこで目にしたものを、ショールームの基準で判断してはいけない。

しかしこのときは、二十七歳の新米が大躍進を遂げたという知らせがワシントン中に広まったため、アルファーは新聞記者を含む三百人もの聴衆の前で自分の主張を擁護することになった。聴衆は、次々と浴びせられる理解不能な質問と、アルファーの口から出る、質問よりもさらに難解な答弁に聞き入った。(87-88p)

ウィンストン・チャーチルはかつてこう述べた。「人は時に心理に蹴躓いて転ぶが、ほとんどのものはただ立ち上がり、何もなかったようにさっさと歩き去る」(207-208p)

新しい理論が受け入れるまでは次の四つの段階を経る。
第一段階――こんな理論はくだらないたわごとだ。
第二段階――興味深くはあるが、ひねくれた意見だ。
第三段階――正しくはあるが、さほど重要ではない。
第四段階――私はずっとこの理論を唱えていたのだ。
J・B・S・ホールデーン(1892−1964)
イギリスの遺伝学者