風が強く吹いている

風が強く吹いている (新潮文庫)

風が強く吹いている (新潮文庫)

目指せ、箱根駅伝! 純度100%の疾走青春小説。

箱根駅伝を走りたい――そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。「駅伝」って何? 走るってどういうことなんだ? 十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく……風を感じて、走れ! 「速く」ではなく「強く」――純度100パーセントの疾走青春小説。

今まで、なぜだかわからないのだけど、三浦しをんさんのことを恩田 陸さんと混同して覚えていた。
スポーツ小説が好きなので期待して読んだ。
650ページ以上あるのに読みやすかったので、長くは感じなかった。
一年でほとんどが素人で、箱根駅伝なんて現実味がないとか思ったけど、終盤になるとそういうことを気にせずに楽しめた。
10人の中では、清瀬さんが一番好き。キングは、最初と最後に少しだけ以外にほとんど描写がなくてよくキャラクターがつかめなかった(単に特徴が薄いからそう感じただけなのかもしれないけど)
レースシーンが面白くて、ドキドキして読んだ。
あと、ムサに

「黒人が足が速いというのは偏見です」(87p)

と言わせていたのに、最初の五千メートルの測定で、高校時代に五千メートルでインターハイに行った主人公の蔵原と箱根に挑むと言った清瀬さんの次に速い10人中3番目という結果は少しちょっと違和感があるような。

走る姿がこんなにうつくしいなんて、知らなかった。これはなんて原始的で、孤独なスポーツなんだろう。だれも彼らを支えることはできない。まわりにどれだけ観客がいても、一緒に練習したチームメイトがいても、あのひとたちはいま、たった一人で、体の機能を全部使って走り続けている。(306p)

あの走りを見てくれ。走るために生まれた存在の美しさを。
悔しさも羨望も軽々と凌駕する姿。べつの生き物のようだ。重力に縛られ、酸素の供給に汲々とする俺との、なんというちがい。
清瀬は叫びだしたい気持ちを、なんとかこらえた。やっぱりきみしかいない。こんなふうに、走ることを体現してくれるのは、俺を駆り立て、新しい世界を見せてくれるのは、走、きみだけだ。(312p)

ハイジさん。あなたは俺に、知りたいといった。走るってなんなのか、知りたいんだと。そこから、すべては始まった。その答えを、今ならあなたに返せそうです。
わからない。わからないけど、こうも不幸もそこにある。走るという行為のなかに、俺やあなたのすべてが詰まっている。(648p)