マルコヴァルドさんの四季

マルコヴァルドさんの四季 (岩波少年文庫)

マルコヴァルドさんの四季 (岩波少年文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
都会のまんなかに暮らしながらも、心うばわれるのは、季節のおとずれや生きものの気配。大家族を養うため、家と会社のあいだを行き来するマルコヴァルドさんのとっぴな行動とユーモラスな空想の世界が、現代社会のありようを映しだします。小学5・6年以上。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
関口 英子
埼玉県生まれ。大阪外国語大学イタリア語学科卒業後、翻訳家として活躍

カルヴィーノ,イタロ
1923‐85。現代イタリアの代表的作家。キューバで、農学者の父と植物学者の母のあいだに生まれる。幼いときに北イタリアのサンレモにもどり、20歳まで過ごす。第2次世界大戦中、パルチザンに参加し、ドイツ軍と戦う。戦後、トリノ大学を卒業し、出版社勤務、雑誌編集などをしながら小説を発表し、注目される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カルヴィーノの作品を読むのは久々だけど、この作品も他の作品とは全く違った味わいがあって、カルヴィーノの作風の幅の広さに改めて驚いた。
解説で、ここ15年ほど、古書店や古本屋でしか、購入できなかったとあるけど、カルヴィーノ作品は僕はまだ新刊で買えるものでも全部は読めていないのだけど、カルヴィーノの作品で新刊で入手できない作品も珍しいと思って、なんとなく気になってはいた作品。
でも、新訳版が発売されてから一月ほども、出てたということに不覚にも気がつかなかったけど。
マルコヴァルドさんの四季は、題名だけ知っていた頃は何故だかは分からないが、主人公は女性であると勝手に思っていたが、マルコヴァルドさんは、子沢山の一家の父親。
この作品は、春夏秋冬のめぐりをひとつの季節ごとにひとつの作品にして、そのめぐりを5回分繰り返しているので、作中だけで少なくとも5年経っていることになる、ひとつの章は、大体10ページから20ページで終わるので、次々とエピソードや季節が変わるので飽きることなく読むことが出来た。
これも解説でも書いてあったことだが、「ごくありきたりの食べ物にも、危険や偽装や悪意が潜んでいる、そんな時代のことでした」と始まる物語もあるので、50年前にイタリアで書かれた作品とは思えないくらいに、現代日本にも通じるような作品もあった。

歴史の流れにさからって「昔にもどる」ことができないだけでなく、その「昔」自体が、じっさいには存在したこともなく、幻想にすぎないのですから。
 マルコヴァルドさんの自然に対する愛着は、都会に住む人だけが持つものなのです。都会に来る前にマルコヴァルドさんがどこにいたか分からないのは、そのためです。都会で自分のことを「よそ者」と感じているマルコヴァルドさんこそ、ほんものの都会人ということができるでしょう。


上記は、カルヴィーノ本人による解説から、抜き出したものだけど、個人的に一番この本の中で印象に残っている文章はこれです。