名探偵に薔薇を
- 作者: 城平京
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1998/07/19
- メディア: 文庫
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出版社/著者からの内容紹介
怪文書『メルヘン小人地獄』がマスコミ各社に届いた。その創作童話ではハンナ、ニコラス、フローラが順々に殺される。やがて、メルヘンをなぞったように血祭りにあげられた死体が発見され、現場には「ハンナはつるそう」の文字が……。不敵な犯人に立ち向かう、名探偵の推理は如何に? 第八回鮎川哲也賞最終候補作、文庫オリジナル刊行。
あんたは私が名探偵であることそのものが間違っているというのか。これが私の運命だとでも言うのか。――あんたは間違っていなければならない。そうでなければ――」
瀬川は拳を開き、それを見つめる。
「私はこんな思いをするためだけに、生まれてきたのか」
(P280)
「なにをやっても結果が変わらないなら、真実と向き合う意味はどこにある。真実を求める意味がどこにある。都合のいい虚構を選んでそれに甘んじていても、結果は変わらないというのか。いかなる災いも人の力で克服できないとするなら、人の意思や努力には、何の価値もないのか」
(P305)
第一部のメルヘン小人地獄では、三橋荘一郎、第二部の毒杯パズルでは、名探偵、瀬川みゆきが語り手。
名探偵、瀬川みゆきのクールなキャラクターが格好良くてかなり好き。第一部では、三橋が語り手だから、クールな印象が強かったけど、瀬川本人が語り手となった第二部では、名探偵の苦悩が描かれている。終わり方が、瀬川が失意の中で終わっていくというのが、どこか悲しい感じがする、瀬川本人が語り手で内面まで書かれているから特にそう感じる。