なぜ私だけが苦しむのか―現代のヨブ記

なぜ私だけが苦しむのか―現代のヨブ記 (岩波現代文庫)

なぜ私だけが苦しむのか―現代のヨブ記 (岩波現代文庫)

完全に全能はないが善である神と、完全に善ではないが全能の神、のどちらを選択するかとせまられて、ヨブ記の作者は神の善を信じるほうを選んだのです。(P63-64)

 悲しみに打ちひしがれている人になんといえばよいかというのは難しい問題ですが、なにを言ってはいけないかというのは少し簡単なように思います。悲しんでいる人を非難することは全てまちがいです(「そんなに深刻になるなよ」とか「泣くのはおよしなさい、みんなこまってしまうじゃないの」)。悲しんでいる人の痛みを小さくする子試みは全て、適切でないし、喜ばれもしません(「きっと、これでよかったのさ」「もっとひどいことになっていたかもしれないんだからね」「今のほうが彼女にとっては幸せなのよ」)。悲しんでいる人に、自分の感情を否定したりごまかしたりすることを促すようなことも、まちがっています。(「私たちには神に問う権利はありません」「神様はあなたを愛しているからこそ、あなたを選んで、こんな重荷をお与えになったんだわ」)。(P139)


思っていたよりも理解しやすかった。著者は、ユダヤ教のラビだから、仕方ないかもしれないけど、神に関する言及が多かった(というよりそれが主題)。けど、悲しんでいるときの怒りの遣りどころについて、自分や、悲劇を止められたのに止めてくれなかった人や、身近にいて手をさしのべてくれる人たちに向けるのではなく、状況そのものに怒るほうが、苦痛の一部である怒りを発散させると同時に、人々からの助けを受けにくくすることもない。
本の一番初めの、『第二版に寄せて』で、ベストセラーだったと知って、ちょっと読む意欲が弱まったけど、読んでよかった。