崩れ

崩れ (講談社文庫)

崩れ (講談社文庫)

出版社/著者からの内容紹介
緑豊かな自然のなかで山が崩れ、河が荒れる。崩れ
その風景はなんと切なく胸に迫るものか。生あるものの哀しみを見つめる最後の長篇

この崩れこの荒れは、いつかわが山河になっている。わが、というのは私のという心でもあり、いつのまにかわが棲む国土といった思いにもつながってきている。こんなことは今迄にないことだ。私は自分がどんなに小さく生き、狭く暮してきたか、そしてその小さく狭い故に、どうかこうか、いま老境にたどりつけたと、よくよく承知している。──本文より

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内容(「BOOK」データベースより)
山の崩れの愁いと淋しさ、川の荒れの哀しさは捨てようとして捨てられず、いとおしくさえ思いはじめて…老いて一つの種の芽吹いたままに、訊ね歩いた“崩れ”。桜島有珠山常願寺川…瑞々しい感性が捉えた荒廃の山河は切なく胸に迫る。自然の崩壊に己の老いを重ね、生あるものの哀しみを見つめた名編。


タイトルどおり、崩れ(山崩れ、地すべり)に着目したエッセイ集。幸田文さんの著作を読むのはこの本が初めてだけど、解説を読むとこの本は他の著作とは雰囲気が違うみたい。
崩れという現象についてあまり考えたことがなかったので、目新しさがあって面白く読めた。
幸田文さんが幸田露伴さんの娘だということに本文を読む前に解説を読もうとして、本の後ろのページを開いたときに年譜を見て、初めて知った、作家の常識的とも言えるような基本的な情報さえあまりしらないので、文学史とか呼んだほうがよいのかな。