薔薇のマリア 13.罪と悪よ悲しみに沈め

内容(「BOOK」データベースより)
ヨハンを失った秩序の番人は弱体化の一途をたどり、街にはSIXの唱える悪徳再生の声が響く。渦中で、マリアとトマトクンは決断する。曰く「今のお前に秩序の番人の総長を名乗る資格はない」―!?トマトクンついに動く!悩めるルーシーは街をさまよい、ベアトリーチェは秘めた想いをマリアに明かす。そして、街が喊声と殺気に沈む決戦の時、アジアンはマリアのために疾っていた―。ルーシー編、激動のクライマックス。


トーナメントの戦闘、こうして命のかからない和気藹々(?)とした戦闘は好き、まあ総長の座がかかっているのだから、秩序の番人の面々からすれば和気藹々とは違うだろうけど。このトーナメントで秩序の番人の面々の名前を覚えられたおかげで、彼らの視点での進行でも誰だっけと思うことなく読み進められて良かった。
マリアローズがいくら主人公だろうと全力でやっても能力以上のことは発揮できず、与えられた役割をこなすことに汲々としているような主人公補正がないところとか、敵でも見方でも、思い通りに状況を操れている人が誰一人いないのがすごくいい。
ジョーカー、最後に少し出てきていたけどただ隠居していたわけでなく、ジェードリ編だけのキャラではなかったことに少し驚いた。
エピローグのSIXとベアトリーチェの会話がすごくいい、本を読んでいて背筋がぞくっとするような感覚を覚えるのは久しぶり。
SIX、最後で彼自身が望んでそうなって多くの人が彼の手で殺され辱められてきたため決して許せず同情もできないが、SIXはいままで(そして恐らくこれからも)平凡な日常の幸福を教授したことがなかったから、SIXの(遅きに逸したが)心境の変化、新しい感情の芽生えが、彼の悪のおこりが生きるため、死なぬためというごく当然のことから始まって、ずぶずぶと深みにはまったのは自業自得だけど、彼は拠り所、または歯止めとなる過去の幸福な体験、経験がなかったということだから、そこに少しだけSIXに哀れに感じた。この巻ではいままでほとんど理解できないでいた悪のSIXの人間性が感じられたのが、そういうものをSIXに感じることになろうとは思わなかったのですごいなあ。