読書について 他二篇

読書について 他二篇 (岩波文庫)

読書について 他二篇 (岩波文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
「読書とは他人にものを考えてもらうことである。1日を多読に費やす勤勉な人間はしだいに自分でものを考える力を失ってゆく。」―一流の文章家であり箴言警句の大家であったショウペンハウエル(1788‐1860)が放つ読書をめぐる鋭利な寸言、痛烈なアフォリズムの数々は、出版物の洪水にあえぐ現代の我われにとって驚くほど新鮮である。


ショウペンハウエルのこの本は有名だけど、哲学書ということでどうも読みづらそうで尻込みしてしまっていたけど、読んでみたら、平明で理解しやすい文章で、読みやすく、哲学とかそういう本を読むにしては珍しく、一日で読みきることができた。
『だれにもわからないように書くほどたやすいことはなく、逆に重要な思想をだれにでも自然にわかるように書くほどむずかしいことはない(P61)』は、難しい話を難しく話す人より、難しい話を誰にでもわかるように話す人のほうが頭がいい。という考えは、この本が元だったのかな。
『多読は精神から弾力性をことごとく奪い去る。重圧を加え続けると発条は弾力を失う。(P7)』という、読書や多読について否定的に語っていたのは知っていたけど、『読書と同じように単なる経験もあまり思索の補いにはなりえない。(P17)』のように経験についてもそういう風に書いてあったことは知らなかった。
著作と文体では、匿名について批判したり、ドイツ語の乱れ(言葉の短縮など)やドイツ語の素晴らしさについて語っているところはなんとなく、ちょっと前の日本語論を思い出した。著作と文体の最後に書いてある、『ドイツ人ほど自分で判断し、自分の判断で判決を下すことを好まない国民はいないのである。(P124)』というのも実に日本人論にもよくでてきそうな文章だ。