イスラームとは何か

イスラームとは何か〜その宗教・社会・文化 (講談社現代新書)

イスラームとは何か〜その宗教・社会・文化 (講談社現代新書)

出版社/著者からの内容紹介
クルアーンが語る、神と使徒と共同体の根本原理と、その実践。イスラーム理解が拓く、世界への新たなる視点。

学者の対決――時は移って9世紀、所は帝都バグダード。……アッバース朝は栄華の絶頂にあった。……都のモスクの1つで今、学者たちが集っていた。居並んでいるのは、この都を代表する大家たち、……いつものモスクの情景さとして変わらない。……違っているのは、座を支配している異様な緊張感だった。今日は、重鎮たちに相対して、1人の見慣れぬ学者が座っている。この人の名をブハーリーと言う。ブハラ出身者、を意味する名前である。……長ずるに及んで、諸国を遍歴してハディースを学び、類稀な逸材として、名が高まった。その人が帝都にやって来るという。都のハディース学者たちは、彼がどれほどの学者か試してやろうと、待ち構えていた。今日は、その対面の日なのである。いや、対決の日、と言うべきか。10人の学者が100のハディースについて、ブハーリーの知識を試す。ハディース百番勝負、とでも言うべきか。――本書より


歴史の本を今月5冊は読もうと思っていたけど、中々読み進めることができないなあ。
クライシュ族にとって腹立たしいことに、彼らはアラビア語の韻文としてクルアーンがただならぬものであることは認めざるを得なかった(52P)』とあるように対立していた部族の人たちでも批判できなかったというのは、クルアーンの韻文の美しさというのはそれほどすごいものなのか。『クルアーンは詩的言語の力で聞くものを納得させるが、理屈を並べるものでは全くない。(83P)』というの面白い。
イスラームを最後にセム的な一神教の伝統を継承するものが実際に現れていないのが、イスラームに説得力を与えているよね。
スンナ派の4大法学派、忘れないように一応書いとく。スンナ派ならどの学派に従っても良いらしい。
クルアーンに規定されていないものを「自ら考えて、判断する」手法を重視する『ハナフィー学派』。
ハディースという典拠を重視して、自らの判断を抑制する「典拠重視の派」が『マーリク学派
マーリク学派の学風を受け継ぎハナフィー学派の方法論も身につけて、「典拠重視」「判断重視」を統合して、イスラーム法学の基礎を作った『シャーフィイー学派
礼拝について師匠のシャーフィーと意見を異にしたハンバルの『ハンバル学派』、礼拝をしないものをハディースに「不信者」とあるのを大いなる罪人の意味に解していたシャーフィーとそのまま不信者(ムスリムでなくなる)という意味にとっていたハンバル。
クーファの民が、フサインムハンマドの孫)に指導者としてきてくれと要請し、彼はそれに応じたがウマイヤ朝イスラームの理想よりも部族的な血縁原理を利用しアラブ優先策を行った)の軍隊に殺された、カルバラーの悲劇でフサインの死を防げなかったクーファの支持者達の慙愧の念がシーア派的心情の基調音となったというのははじめて知ったけど面白いなあ。
パレスチナ問題について、イスラームは、ユダヤ人は聖書を根拠にパレスチナユダヤのものだと言っているが、ユダヤ教徒アブラハムとその後裔を自分たちだけと考えているが、それは聖典の民(ユダヤ、キリスト、イスラーム)共通のもので、聖書の記述はユダヤ教徒にその土地を特権的に与える根拠にはならないと考えている。パレスチナ問題を扱った本、そのうち読もう。