日本語のために

日本語のために (新潮文庫 ま 2-2)

日本語のために (新潮文庫 ま 2-2)

子供に詩を作らせるな、文学づくのはよそう、文部省にへつらうな等、国語教科書の現状を弾劾する「国語教科書批判」。口語訳聖書の文体を批判しつつ、古典主義的態度の必要を説く「未来の日本語のために」。総理大臣の文章を点検し、時に言葉についての閑談を楽しむ「当節言葉づかひ」等々。著者の日本語に対する関心をまるごと披瀝し、言葉と人間を考えた画期的な著作である。

この本の前に読んだ『長距離走者の秘密』が共訳だけど丸谷才一さんの訳書だったので、同じ著者の本を連続して読むのはシリーズ物でない限りめったにないから自分でも珍しく思った。丸谷さんの著書はエッセイとか訳書とかは何冊か読んでいるけど、小説を実は読んだことがないので、そのうち小説も読まなくては。丸谷さんの文章は、旧仮名遣いなのに読みやすくて不思議な感じだ。
日本語論は一時期、流行っていたようだけどあんまり読んでいなかったので新鮮さを感じながら読むことができる。もっともこれは35年も前の本だけど。
国語の教科書の批判、文体の意識の欠如、古典主義的な傾向の乏しさなど。日本語、外国語についてどちらかを賞賛することがなくバランスが取れているのが良い。