薬指の標本

薬指の標本 (新潮文庫)

薬指の標本 (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡…。人々が思い出の品々を持ち込む「標本室」で働いているわたしは、ある日標本技術士に素敵な靴をプレゼントされた。「毎日その靴をはいてほしい。とにかくずっとだ。いいね」靴はあまりにも足にぴったりで、そしてわたしは…。奇妙な、そしてあまりにもひそやかなふたりの愛。恋愛の痛みと恍惚を透明感漂う文章で描いた珠玉の二篇。


薬指の標本』と『六角形の小部屋』の2つの中篇が収録。文が上手くて読みやすいから、速く読み終えてしまうけど、文学作品を読むのにはもっとじっくり読まないといけないとはわかっていても、じっくりと読んでもどうせ自分にはわからないという開き直りのような感情があるからいけないなあ。批評もあまり読まないので、読んだ作品の批評も内容を忘れないうちに読むようになれば、おのずと少しずつわかってくるものなのかなあ。まぁ努力せずに、そんな楽観的なことを考えるだけでなく、実際に何かやらなきゃとは思うので批評は今後なるべく読むようにがんばろう。と、実行するかは自分でもわからないけど決意だけでもしておこう。
薬指の標本』弟子丸さん、個人的には不気味で怖い印象だな。それは語り手にとっては神秘的といった印象になるのだろうけど。
『六角形の小部屋』

ただちょっと妙な出来事が続いた。一瞬背中がぞくっとはするが、取り立てて気にしなければ、どうということはない種類の出来事だった。

こうしたところで語られている出来事は、特に後にそれを説明していないので何らかの暗喩なんだろうけど(それを言ったら題名にもなっている六角形の小部屋そのものが)、そうしたことがわからないから、どこかすっきりしないものがある。わからないことすらわからないような作品なら特に気にすることはない(できない)のだけど、こうした幻想的な小説にはおのずとなにかしらあるのにそれが重要なのだろうと思っても重要なものがわからないとわかっているから読み終えた後どうもすっきりしない。