英仏百年戦争

英仏百年戦争 (集英社新書)

英仏百年戦争 (集英社新書)

出版社/著者からの内容紹介
直木賞作家にして西洋歴史小説の第一人者が、錯綜する世界史上最大級の事件をやさしく解きほぐし、より深いヨーロッパ理解へと誘う。これまであまり例のなかった、英仏百年戦争の本格的概説書。

内容(「BOOK」データベースより)
それは、英仏間の戦争でも、百年の戦争でもなかった。イングランド王、フランス王と、頭に載せる王冠の色や形は違えども、戦う二大勢力ともに「フランス人」だった。また、この時期の戦争は、むしろそれ以前の抗争の延長線上に位置づけられる。それがなぜ、後世「英仏百年戦争」と命名され、黒太子エドワードやジャンヌ・ダルクといった国民的英雄が創出されるにいたったのか。直木賞作家にして西洋歴史小説の第一人者の筆は、一三三七年から一四五三年にかけての錯綜する出来事をやさしく解きほぐし、より深いヨーロッパ理解へと読者をいざなってくれる。


佐藤賢一さんの著作を読むのははじめて。歴史系の本としてはすごく読みやすく、面白かった。
『序、シェークスピア症候群』で一人の文学者が作った史実とは違う認識が、現在に至っても多くのイギリス人がそれを基にした歴史を信じているというのは驚き。
『内実はイングランド王国の方が、ノルマンディ公領の属国だった』(P30)イングランドノルマン朝の関係、日本で言えば薩摩藩琉球王国みたいな関係か。
『ノルマンディ公家とフランス王家は、土台が大陸の覇権を争うライヴァル同士だった。ギョーム公がイングランドを征服したのも、一つには王号を手に入れて、不倶戴天の敵と肩を並べたかったからなのである。が、それはギョームだのアンリだのと名乗る「フランス人」が、シャルルだの、ルイだのと名乗る「フランス人」を相手に、勝手に矛を交えていただけの話である。』(P33)初期のイングランド王家はフランス人、だから大陸(かつての自分たちの)土地を取り戻すために長々と戦っていたのか。
フランス、「最後の中世人」ジャン二世と「最初の近代人」シャルル五世、親子なのにえらい違いだ。
『王侯貴族は母語として仏語を話し、英語は庶民の言葉』(P140)ヘンリー五世、ほとんど仏語を話さない最初のイングランド王。
『実際のところ、英仏百年戦争は大きな分岐点だった。一方の中央集権国家と他方のナショナリズムを左右の両輪として、いよいよ国民国家というものが歴史の前面に出てくる。』(P189)この戦争によって、自分の家や領地という単位でなく、国家という枠組みをはじめて強く意識しはじめ、国民国家が形成された。