原始仏教 その思想と生活

原始仏教 その思想と生活 (NHKブックス)

原始仏教 その思想と生活 (NHKブックス)

釈尊にかえれ」の願いが高まる今日、古代インドに発生した原始教団の熱気、素朴で現実的な思想と生活倫理を解明。歴史的、社会的視点から一貫して流れる仏教の真髄を追究し、偏見のない正しい道を示す。

(NHK出版サイト内 書籍NHKブックス>−哲学・心理・思想・宗教>原始仏教 より)

『四 苦しみと無常』以降の感想。引用が主。

『欲望をすてよ、ということはくりかえし説かれているが、その目的を達した究極の境地になると、わざわざ欲を去ることもないと説いている。』(P70)目的を達したら、今までの教えとは異なることを説いているというのは面白いなあ。
『われわれが忌み嫌い、耳にするさえ嫌だと思うおいとや毎年とがあるからこそ、われわれは真実の生命を生きることが可能なのである。』(P76)そういう考え、今まで考えたことなかったのでちょっと新鮮。
『「一切の生きとし生けるものの親友」ということは、ヒンズー教では最高神の特性であるとされていた。ところがここでは人間が実現すべき理想であるとされているのである。』(P120)他(今まで)の宗教の最高神の特性を、人間が目指すべきものとして説いているのはすごいな。
『具体的な善い行いとしては、(中略)ガンジス河において竜が船上の人を飲もうとしているのを退治したというような事例が挙げられている』竜退治が具体的な例としてあげられているのが面白い、あと古代インドにおいての竜のイメージは、中国のような竜なのか西洋の竜なのか(もし中国のような竜ならインドとどちらがそのイメージの発祥なのか)がちょっと気になる。
『仏教とはゴータマ出現以前からすでに仏教的実践の行われていたことを承認している。すなわち仏教はゴータマ・ブッダ以前からあったのである。』(P159)イスラームアブラハムみたいなこと?
『『或る者は人の胎に宿り、悪行を造った者は地獄に落ち、正しき者は天に昇り、煩悩を滅し尽くしたものはニルヴァーナに入る。』というが、これが原始仏教の来世間を最も良くまとめているであろう。』地獄とか天国というのが仏教で語られているのは、輪廻転生があるのになんでなんだろうと思っていたけど、天国と地獄が現実の世界と同様に存在すると考えられていたからか、それに天国や地獄へ行ってもそれで終わりというわけではなくて(天国や地獄にいる期間が人生と比べて長いのか短いのかは分からないけど)、輪廻転生だからニルヴァーナ(涅槃)に入るまで終わらないということか。
バラモン教では他のアーリヤ諸民族が行っていたのと同様に人間一生の各々重大な時期に、常に呪術的な宗教儀礼を行っていたが)『ところが仏教はこれらをすべて無視して排斥してしまった。どこまでも迷信排斥の立場に立っていた。魔法・呪術・卜占の類はすべて非難している。そしてこれらの宗教儀礼を排斥して、過程と結びついて宗教的儀礼は行われなかった。』(P181)イスラームのように生活のすべてが関係しているというのもいいけど。生活に密着する気のないストイックな感じがこれはこれでいいね。
『仏教が家庭生活の内部にまで入ってきて積極的に信徒を組織的に指導することをしなかったという点に、後世仏教がインドで滅びてしまう遠因の一つがあると考えられる』(P182)仏教が何でインドで廃れたのか気になっていたけど、遠因の一つにそんなことがあったのか。
『日本では一般に、仏教は古来財を賤しむ思想が著しいと考えられてきたし、実際すでに原始仏教聖典のうちにそういう教えも説かれているが、それは出家修行者のために説かれているのであって、在俗信者に対してはむしろ積極的に現世的な財を尊重すべきことを説いている。財の集積ということは、人生の望ましい目的の一つと考えられている。』(P206-207)今まで仏教が在俗信者に対しては、積極的に現世的な財の尊重すべきだということが説かれていたというのは知らなかったので驚いた。