聖書の起源

聖書の起源 (ちくま学芸文庫)

聖書の起源 (ちくま学芸文庫)


出版社/著者からの内容紹介
聖書は、神話と伝承につつまれた、人間歴史の壮大なドラマである。旧約聖書新約聖書にみられる奇跡と驚異の物語は、古代オリエント地域に生きた“神々と人間”ののぞみの結晶である。聖書の起源には、土地を求めてさまようイスラエルの民がおり、神ヤハウェとの契約を成立させる土地の祭りがある。また救い主キリストの背後には、カナン地域の死と復活の神々、病気なおしの神々の系譜がある。本書は、聖書を教典としてみるのでなく、古代オリエント地域にある多くの伝承断片が、なぜ聖書へと結実していったのか、その過程と謎を解明する。

伝承文学としての聖書――聖書には旧約聖書があり、新約聖書がある。どちらも、その内容については、別個の独立した文学の集成としかいいようがない、膨大な文書の集成なのである。旧約聖書39巻、新約聖書27巻、ページ数にして1700ページをこす。もちろん一言の説明も、あとがきもない。製作年代もマチマチ、作者も多くは不明である。というより本来が作者不詳の口承文学、あるいは伝承のたぐいに属するものが多い。こうした謎につつまれた聖書を前にして、それにもかかわらず、聖書に起源があるという事実は、何という大きな魅力であろうか。この魅力のすべては、その内容から発している。――本文より

内容(「BOOK」データベースより)
キリスト教の正典、「聖書」―その奥にひそむのは、古代オリエントギリシアのあらゆる神々の姿が織り込まれ、ユダヤ民族悠久の歴史が幾重にも積み重ねられた、多文化的な空間であった。異教のバァール神話の死と復活のドラマ。ギリシア神話アドニスアフロディテの出会いと別れの物語。エーゲ海であがめられた治療の神アスクレピオス。治癒神イエス登場の背後には、これら異端の神々の系譜を透かし見ることができる。従来の宗教学的解釈では光をあてられることのなかったこの歴史を、宗教人類学の視線から掘り起こし、のちの聖書の読みを決定づけた古典的名著。

聖書のことはあまり知らないけど、読みやすく面白かった。出エジプト記が「過越祭(ベサハ)」と結合した祭儀神話であり、祭儀劇であったというのは知らなかったけど、面白い。二部の『II病気直しの神々』から三部にかけての、古代地中海の病気直しの神々から治癒神イエスのつながり、興味深い。『福音書記者達は、イエスその人の個人的魅力や、ありのままの生涯の復原にはさしたる興味を示してはいないからである。』(P193)『われわれは、その原書の様式を、共同体の<祭り>にみることができる。共同体は、キリストの<祭り>を中心に結集し、<祭り>において、キリストの生涯を彷彿と想起した。福音書は、<祭り>において朗誦される祭文だったのである。』ここでも再び祭りか。聖書、どうも文章というイメージ強いから祭との関連性がちょっと意外。