母なる夜

母なる夜 (ハヤカワ文庫SF)

母なる夜 (ハヤカワ文庫SF)

内容(「BOOK」データベースより)
第二次大戦中、ヒトラーの宣伝部員として対米ラジオ放送のキャンペーンを行なった新進劇作家、ハワード・W・キャンベル・ジュニア―はたして彼は、本当に母国アメリカの裏切り者だったのか?戦後15年を経て、ニューヨークはグリニッチヴィレジで隠遁生活を送るキャンベルの脳裡に去来するものは、真面目一方の会社人間の父、アルコール依存症の母、そして何よりも、美しい女優だった妻ヘルガへの想いであった…鬼才ヴォネガットが、たくまざるユーモアとシニカルなアイロニーに満ちたまなざしで、自伝の名を借りて描く、時代の趨勢に弄ばれた一人の知識人の内なる肖像。

ヴォネガット、有名だけど読むのははじめて、SFは読了するのにかなり時間がかかってしまうので読むのが遅れた。だけど、実際読み始めてみるとビックリするぐらい読みやすかった。この本がSFっぽくないだけなのか、作風としてそうなのかは分からないけどなんかSFという感じはしないなあ。
『「この命を懸けることは名誉です」
 そのまま彼は倒れて死んだ。』(P107)この唐突さには思わず笑った。
主人公キャンベルの淡々とした語りのおかげで、かなりきつそうな状況なのに重苦しい感じにならないのが良かった。そう間を空けずに、ヴォネガットの小説をもう1、2冊読もうかなという気になった。