永遠の歴史

永遠の歴史 (ちくま学芸文庫)

永遠の歴史 (ちくま学芸文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
時と永遠、比喩と象徴、主題と変奏、それは「原型とその反映」であり、また「一と多」でもある。永遠、象徴、主題は原型であり、一である。時と比喩と変奏は原型の反映であり、一の多様な形象である。永遠に対する時間の世界、一語に対する多語の世界を探求し造形することこそが、人間的な営為の本源にほかならない。20世紀の世界文学に屹立する鬼才ボルヘスの文学・思想の根源を示す、珠玉の哲学的エッセイ集。


ボルヘス、エッセイ。筑摩書房創業70周年記念復刊。本屋で見るまで復刊されることに気がつかなかった。
はじめの方のエッセイはちゃんとは理解できなかった。「『千夜一夜』の翻訳者達」は面白かった。


 まずその開祖から話を始めよう。周知のように、ジャン・アントワーヌ・ガランはフランスのアラビア学者で、彼がイスタンブールからもたらしたものは、根気よく収集した貨幣のコレクションと、コーヒーの流布に関する研究所と、『千夜一夜』のアラビア語版、それにシャーラザードにも劣らぬ信頼の記憶力を持った、一人のマロン教徒の女助手であった。この素性のいかがわしい補佐役――その名をわたしは忘れたくない、それはハンナであるといわれている――のおかげで、アラジンの物語、四十人の盗賊の物語、アフメット王子と仙女ペリ・バヌの物語、目がさめながら眠っているアブゥル・ハサンの物語、ハルーン・アル・ラシードの夜の冒険の物語、妹を羨む二人の姉の物語など、原本にはない、ある基本的な物語がいくつか残っているのである。ガランが、時とともに不可欠なものになってゆく、そして未来の翻訳者たち――つまり彼の敵たち――があえて削除することはないであろう物語のかずかずを収録
(P128)

って、アラジンの初出って、翻訳者が勝手に創作したものだったのか、はじめて知った。
ボルヘスのエッセイで、こういう翻訳者についてかかったもの以前にも読んで面白かったのでそれなんだったかな、と思い出そうとしたけど思い出せないのでもやもやしてたら、P143に『フィッツジェラルドの『ルバイヤート』』という言葉が出てきて、ようやく思い出せた。『続審問』の「エドワード・フィッツジェラルドの謎」だ。ボルヘスの翻訳者に関するエッセイはなんか好きだな。