インテリジェンス人間論

インテリジェンス人間論 (新潮文庫)

インテリジェンス人間論 (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
権力者はだから面白い。外務省在籍時代に間近で接した、歴代総理やロシア首悩の意外な素顔、さらには誰もが知る歴史上の人物の精神にひそむ生々しい野心と欲望に、インテリジェンスの視点から切り込んだ異色の人物論集。国際政治の最前線で、外交の武器となる人間観察力を磨いた著者ならではの、ディープな知見と圧倒的な筆力で驚くべき、でも愛すべき権力者の真実の姿を炙り出す。

佐藤優さんの本読むの久々。
ユダの福音書」の話は特に面白かった。
『インテリジェンス(諜報)の世界でお人好しは生き残っていくことができないので、職業的に陰険さが身に付くのであるが、プーチン氏のように陰険さが後光を発している例は珍しい。』(P105)陰険さが後光には笑った。
トルクメニスタン、働かなくても食っていけるというのはいいなあ。
第一次世界大戦中に英和対訳のロバートソン・スコット著『是でも武士か』(丸善、一九一七)というドイツの会戦責任と残虐行為を倫理、感情の両面で追及した書籍が刊行された。ロバートソン・スコットというのはおそらく偽名で、日本の親独感情を覆すためにイギリスの秘密情報宣伝部「クルー・ハウス」から派遣された工作員と見るのが妥当だ。『是でも武士か』には翻訳社名が記されていないが、この翻訳を行ったのは民俗学者柳田國男(一八七五〜一九六二)である。イギリスの秘密情報宣伝部は日本政府、民間双方の有識者に強い影響を与えることのできる柳田國男を巧みにリクルートしたのである。』(P239)柳田國男の名前がそんなところで見れるとは思わなかったのでビックリ。
『人間の場合は女だけでなく男も、恒常的に自らの命を他者や国家、理念、神などのために投げ出す覚悟ができる。この覚悟を作り出すのが思想である。人間にとって自分の命はとてもたいせつだ。その大切な命を投げ出す気構えができた人間は、他人の命を奪うことに躊躇がなくなる。イスラム原理主義マルクス主義、(北朝鮮の)主体思想、そして私が信じるキリスト教思想も、基本的には「人殺し」を正当化する倫理を含んでいる。だから思想を扱うことと殺人は隣り合わせにある。このことを自覚していない思想家は無責任だと思う。』(P319-320)思想と人殺し、そんなつながりのこと考えたことがなかったので新鮮、だけど納得。