エリザベス一世

エリザベス一世 (講談社現代新書)

エリザベス一世 (講談社現代新書)

出版社/著者からの内容紹介
逆境に生まれ、大国スペインに勝ち、そして貴公子との恋……
イギリスの運命を変えた女王!
来襲する無敵艦隊を破り、華やかで冒険に満ちた時代を築いた処女王。その魅力的な実像と時代を鮮やかに描き出す。

華麗にして勇猛──ためらいや迷いは長かったが、いったん決断するとエリザベスの行動は常に素早かった。周囲の者は身を案じて止めようとしたが、エリザベスは敢然としてティルベリーの防衛軍を閲兵し、全将兵を前に演説した。「私はこの戦いのただ中で、あなた方と生死をともにする覚悟であり、また神と私の王国のため……塵の中へ命も投げ捨てる覚悟である。私は自分が女性として肉体が弱いことは知っているが、1人の国王として、またイングランド国王としての心と勇気とをもっている……ヨーロッパの君主側が王国の領土をあえて侵すようなことがあれば、それをこの上ない侮辱と考え、それを忍ぶよりは、自らも武器を取って自分があなた方の司令官となり、審判者となり、戦場におけるあなた方の働きに報奨を与える者になりたい」これを耳にした全軍の将兵も、伝え聞いた国民も奮い立ったことはいうまでもない。──本文より

イギリス革命との関連で読んでみたので、「はじめに」で『イギリス革命を理解するためにはどうしても、その前のテューダー朝時代、とりわけエリザベス一世の時代状況を知ることが不可欠』(P3)と書いてあったのがちょっと嬉しい。
「第一章 王女エリザベスの誕生」で、テューダー朝の歴史もざっと書いてあるのが嬉しい。当時の国際関係の状況についての説明も豊富なのが良かった。
『当時のヨーロッパの絶対王政はオリエントの古代帝国のような強権的な専制政治とは違って、君主に対する国民の人気や支持におおきく依存するものであったことも想起されて良いと思われる。』(P49)当時の王の基盤が弱い(絶対的とはいえない)ものとはわかっていても改めて書かれると、やっぱりへぇっておもえる。
財政難で「独占特許状」を頻発して、それが問題になると『独占特許状は廃止され、その乱用に責任あるものの処罰さえ宣言し』(P220)て『エリザベスと政府の財政問題の処理の不手際を露呈したものであったが、それさえも女王と議員たち(ひいては国民全体)との連帯感強化の場にしてしまったことは、エリザベスの優れた政治的感性を示すものであるとも言えるであろう』(P220)というのはいいんだけど、『それによって、イングランドの国家財政は悪化の一途をたどることになったのであり、エリザベスが死亡した時には、40万ポンド以上の借金が後に残ったのであった』(P231)というのだから、政治家としてはカリスマ性があって優秀でも財政的な面では決して優秀ではなかった、そしてこの国家財政の悪化が最終的に革命に結びついたということか。