黄金の世界史

黄金の世界史 (講談社学術文庫)

黄金の世界史 (講談社学術文庫)

内容説明
金銀の所在と、繁栄・権力は同居するのか?ケインズの問いです。5000年間の金銀の動きを追跡し、黄金と覇権の不思議な関係が見えてきます。人類学と歴史学の知見を総動員して、黄金の魔力の謎に迫る。
内容(「BOOK」データベースより)
フロイト曰く「黄金は人間の深い潜在意識の中で本能を満足させる」と。エジプトの黄金の王墓、南米の黄金文明、中国の絢燗な王宮…。政治の覇者は必ず金を求めた。古代、大帝国時代を経て、大航海時代の金銀の大流入で、西欧へと覇権が動く近代、産業資本主義の発展と金本位制が崩壊した現代まで、「金」という視座から見たもう一つの世界史を読む。

最初の古代から具体的なエピソードが多くて読みやすく、図版が多いのも良いね。「先史時代から現代まで、5000年の金銀の動きを追跡し、黄金と覇権の所在をたどる。」(帯の文章)とあるように黄金で見る栄枯盛衰、だから一般的な世界史のアウトラインに沿ったものに。略奪、交易、通貨のエピソードがメイン。金細工については古代アメリカの黄金で少し出てくる程度。
『ただしマルコ・ポーロは、日本の国すべてのものが金でできているとは書いておらず、産金が豊かで、国王の宮殿が金でできている、と述べているにすぎない。
 これは時代的に見ると奥州藤原氏が、一二世紀はじめに現在の岩手県平泉につくらせた中尊寺金色堂の噂が反映しているのではないかと思われる。』(P130)今まで「すべてのものが」と書いてあるのかと思っていたけど、違ったのか。『マルコ・ポーロのいう黄金国日本は、単なる夢まぼろしではなかった。八世紀以後、日本が東アジアにおける重要な金の供給者であったことは、南シナ海からインド洋にかけて、かなり良く知られた事実であった。』(P130)へぇ、案外昔は日本でも金が取れたんだね。
『意外なのは、天文の後期すなわち一六世紀半ばより、中国から日本に金が輸入されたらしいことである。あるオランダ人の記録によれば、マカオから日本に向けて輸出する品目中で、絹織物に次ぐ重要な商品は金であった。中国における金銀相場は、金の値が非常に安く、一体八であった。したがって金の輸入は銀の豊かな日本にとってはなはだ有利であった。
 一六世紀後半において、フィリピンでは金は銀に対して中国におけるよりもさらに低廉であった。日本人がルソン、ミンドロなどの島々に来て金や蝋を輸入したことが、一五六七年、ホアン・パチェコ・マルドナドがスペイン国王フェリペ二世(在位一五五六〜一五九八年)に送った書簡に、大量の銀を産する日本の船が毎年来航するが、その主要な交易は、銀を金に交換することで、その割合は金一マルコに対し銀二ないし二・五マルコである、と述べている。』金が中国から輸入されていたということは意外。あと、この時代の東南アジアとの交易の話が読みたいけどなんか良い本ないかな。歴史の本を探してみて良さそうなものが見当たらなかったら、飯嶋和一さんの「黄金旅風」でも読もうかな(タイトルの黄金って比喩でなく、この交易のことかな?)。