傭兵の二千年史

傭兵の二千年史 (講談社現代新書)

傭兵の二千年史 (講談社現代新書)

出版社/著者からの内容紹介
古代ギリシアの民主制の崩壊に始まり、中世を経て、ナポレオンの時代に至るまで、歴史の転換点で活躍したのは多くの傭兵たちだった!

血の輸出――スイス傭兵部隊とは国家管理の傭兵であった。しかも州政庁による強制徴募など必要なかった。働き口のない屈強な若者たちが先を争って傭兵募兵に応じたのである。17世紀、フランスの太陽王ルイ14世のある高官が、スイスの司令官に「スイスの傭兵に支払う賃金は金の延べ板にしてパリからバーゼルまでの道を覆い尽くしてしまう」とスイス人の金の亡者ぶりに不平を言い募った。するとその将軍はすかさず、「フランスのためにスイス人の流した血潮はパリからバーゼルに至るありとあらゆる河川に満ち溢れている」と切り返した。たしかに「金のないところスイス兵なし」と言われるほど貪欲に金と略奪品を求めてヨーロッパ諸勢力の傭兵となったスイス傭兵部隊だが、なんといっても最大のお得意様はフランスであった。フランスのために300年間で50万以上のスイス兵が命を落としたと言われている。そのためか、フランス最古参の連隊「ヒカルディ」の連隊旗はスイス傭兵に敬意を表して白地に赤十字となっている。――本書より

日本でのエピソードが枕や対比として少し入っている以外は、ヨーロッパの傭兵の話。中世メインで、古代や現代は少なめ。
「世界で二番目に古い職業」(P14)内容とは関係ないことだけどそう称する職業は他にも色々あるらしいね。
『たとえばドイツの場合、皇帝が戴冠のために行うローマ遠征を除いて、ドイツ以外の地に出陣する義務はなかった。それにたとえ、ドイツ国内であっても、やれ川岸まで、や暦場で一日の行程のところまで、やれ州のなかまで、と細々とした制限が設けられていたのである。そしてこれらを超える出陣要請には当然、特別手当がついて回った。だとすれば騎士が君主への軍役以外に傭兵家業に精を出しても何の不思議もないことになる』(P41)こんな様なやたらと制限のある状態では使い勝手が以上に悪そうなので『制約の多い封建騎士軍を使うよりも、彼らが軍役を逃れるために払う金で傭兵を雇ったほうが、はるかに手っ取り早く効率よい軍編成ができるのだあった。』(P43)というのは理解できる
『スイス兵は祖国の国家機構により「裏切られて、売られて」いたのだ(『裏切られて、売られて』アルバート・ホッホハイマー〔邦訳なし〕)』(P76)このほかにも「裏切られて、売られて」は色々引用されていて、それが面白く読みたいと思ったけど、邦訳がないというのは残念だ。
ハプスブルク家ほどランツクネヒトへの給料支払いモラルの欠如した雇い主はいなかった。』(P126)とか『フェリペに制覇カトリックによる世界統一の完全復活の夢に取り憑かれ、フランス王国の母后カトリーヌ・ド・メディシスが約二万人の新教徒(ユグノー)を殺戮した「聖バルテルミーの虐殺」の報を受けるや快哉を叫び、ただちに記念貨幣を発行し、神への賛美を持ってこの史上稀に見る大量虐殺を言祝いだ』(P129)とかは、前日に「ハプスブルク家」を読んだばかりだったからギャップに驚いた。けっこうフィルターかかっていたんだね。
『それが証拠にルイ十四世の頃、スイスの人口は九十万弱、そのうちのべ十二万人がフランス軍に仕えている。』(P175)ものすごい比率だ。