宗教改革の真実 カトリックとプロテスタントの社会史

宗教改革の真実 (講談社現代新書)

宗教改革の真実 (講談社現代新書)

出版社/著者からの内容紹介
ルターの「論題貼り出し」はウソ!
中世はこのようにリストラされた!
中世の人々は、カトリックへの反逆をなぜ受け入れたのか?ルター伝説の真相から聖画像破壊まで、大転換期の諸相を描ききる。

宗教改革当時の状況を見る社会史的な方法をとっている。これを読む前に、プロテスタントカトリックの抗争など社会史・戦争史についての説明の本を先に読んどいたほうが良かったかなあ。
『印刷された文書は増大したが、実は、当時は字が読めない人が大部分であった。聖職者や、学芸に関心がある一部の貴族は字が読めたし、書けたが、貴族層のおそらく半数近く、そして民衆の大多数は文字と無縁の生活を送っていた。しかし、宗教改革運動の結果、読み書きできる人がかなり増大することになる。』(P40)宗教改革以前には、貴族でさえ半数近くが文字を読めなかったというのは驚くな。
『当時のひとびとが、素朴かつ熱心に聖遺物をあがめていたこと、そして、ザクセン選帝侯フリードリヒの聖遺物についていえば、贖宥状が売れると聖遺物の拝観者が減る恐れがあったということである。』(P79)ルターを庇護した理由はそれか。
『民衆は、カトリック教会が聖画像の寄進や参詣は推奨されることだと教えたので、かつてはそれにしたがったが、一五一七年以降、宗教改革の指導者たちが聖画像は神の意思に反すると説きはじめると、今度は素朴に豹変して、こちらにしたがったという解釈である』(P98)流されやすいなあ。
『都市共同体は神が祝福した「聖なる共同体」であり、都市城壁内は「聖なる空間」であるから、信仰について統一的でなければならず、その共同体に複数の教義あるいは真理概念を認めることになる複数宗派の併存はありえないというのが、当時のひとびとの常識であり、むしろ自明の理であった。』(P132)宗派の併存を認めないという心性は想像がつき難いなあ。
カトリック宗教改革派も、ともに自分たちの教義こそが真理という確信に立っており、「信徒を永遠の破滅に導く誤った協議」を説く相手宗派を許容する思考はもちあわせていなかった。当時のキリスト教はその厳格な一神教的性格もあり、われわれ今日の日本人が想像する以上に、そのことへのこだわりはおおきかったと考える。十六世紀の民衆にとって、一社会に複数の宗派が併存する現実を受け入れるには、根本的な価値観の終生を必要としたはずである。』(P217)カトリックと正教とあるけど、同じ国に両方があるわけじゃあないからなあ。そういう意味じゃあ、現実に同じ国、都市の中に別の宗派が併存していくようになったという意味でこの改革は画期的だったのか。