殿様の通信簿

殿様の通信簿 (新潮文庫)

殿様の通信簿 (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
史料「土芥寇讎記」―それは、元禄時代に大名の行状を秘かに探索した報告書だったのか。名君の誉れ高い水戸の黄門様は、じつは悪所通いをしていたと記され、あの赤穂事件の浅野内匠頭は、女色に耽るひきこもりで、事件前から家を滅ぼすと予言されていた。各種の史料も併用しながら、従来の評価を一変させる大名たちの生々しすぎる姿を史学界の俊秀が活写する歴史エッセイの傑作。

磯田道史さん、「武士の家計簿」を読んで、すごく読みやすくて、面白かったので早速文庫になっているこの本も読了。
高家、足利将軍や織田信長の子孫なんだはじめて知った。こうした恐らく一般的なことも知らないということに気付くと、もっと歴史の本を読まなくちゃなあと感じるなあ。
『「あの大石の指導力は、どこからきたのか」
 と、よくたずねられるが、意外に阿呆らしい話かもしれない。
「浅野内匠上が閨房で女と戯れ、ちっとも政務に出てこない。仕方なく、大石が筆頭家老として藩政を取り仕切っていた。それで、藩士は大石のいうことを聞く習慣ができていた」
 そういうことも考えられるのである。』(P48-49)史実の浅野内匠上は良い主君ではなかったようだねえ。
『信長を大々的に祭る建勲神社京都市北区)ができたのは、実に明治になってからのことである。あまり知られていないが、明治天皇は無類の信長好きであり、その意志が働いた結果、この神社がつくられたといわれている。』(P106)明治天皇が信長好き、というのは少し驚いた。
前田利常、一人で三章も分量がある。
『「家康公は、死ぬ間際に、前田は助けることにした、と仰せられた。福島のほうは潰すつもりであったらしい」
 この話を必死になって言い触らした。少々、尾ひれをつけて、言い触らしたかもしれない。
(家康公の遺言なら、前田家は潰せない)
 自然とそういう話になるのをねらって、組織的に宣伝した。』(P117)家康の死ぬ間際の脅しをそういう風に、自家の生き残りのための宣伝材料に使うなんて、よく利用しようと思ったなあ。
『前田利常という人物は複雑な内面をもっている。前田家を守ろうとしているのかと思うと、単に面白がってやっているとしか思えない「天下」をめぐる危険な賭け事をいつの間にか、はじめている。そのうえ、この男には、快活な明るさと、権力の場で見せる陰湿な残忍さが同居している。』(P200-201)本当によくわかんない人だなあ。