ハーモニー

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

内容紹介
ベストセラー『虐殺器官』の著者による“最後”のオリジナル作品<br> 21世紀後半、〈大災禍〉と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は見せかけの優しさと倫理が支配する“ユートピア”を築いていた。そんな社会に抵抗するため、3人の少女は餓死することを選択した……。 それから13年後。死ねなかった少女・霧慧トァンは、医療社会に襲いかかった未曾有の危機に、ただひとり死んだはずだった友人の影を見る――『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。日本SF大賞受賞作。
内容(「BOOK」データベースより)
21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰にただひとり死んだはずの少女の影を見る―『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。第30回日本SF大賞受賞、「ベストSF2009」第1位、第40回星雲賞日本長編部門受賞作。

最近は小説を中々読めていないので、読み始めるまでに時間がかかっちゃったよ。さて、次は「メタルギア」も読まなくちゃ。
解説の中で、著者のインタビューの引用で『僕はまず、理屈が先にある感じです。理屈にそってキャラクターをつくり、そのキャラが喋るロジックを魅力的に見せるにはどうしたらいいのかって言うことで話を考えていきます。』(P376)とあって、今までそんな事考えなかったけどそうか、と納得がいく。この小説とかもろそんな感じだねえ。
『わたしは逆のことを思うんです。精神は、肉体を生き延びさせるための単なる機能であり手段に過ぎないかも、って。肉体の側がより生存に適した精神を求めて、とっかえひっかえできるような世界がくれば、逆に精神、こころのほうがデッドメディアになるってことにはなりませんか。』(P173)
『かつては宗教が、わたしがわたしであることを保証していたのだろう。すべては神が用意されたものなのだから、人間がそれを口に差し挟む必要はない。けれど、宗教のそのような機能は今日では完全に失われてしまった。喜怒哀楽、脳で起こるすべての現象が、その時々で人類がおかれた環境において、生存上有利になる特性だったから付加されてきた「だけだ」ということになれば、多くの倫理はその絶対的な根拠を失う。絶対的であることを止めた倫理――相対的な倫理――は脆い。歴史がそれを証明している。』(P327)