謎解き 古代飛鳥の真相

謎解き 古代飛鳥の真相 (学研M文庫)

謎解き 古代飛鳥の真相 (学研M文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
わが国最初の国史日本書紀』―この歴史書は古代史の真実そのものではない。天皇家の正統性を証明する目的で書かれたという『日本書紀』の性格を把握したうえで、個別の記述におけるフィルターを取り除いてみたときに新たに見えてきたものとは!?蘇我氏物部氏聖徳太子、中大兄王子、推古天皇小野妹子…欽明朝から天智朝まで、飛鳥時代を彩った人々・事件の謎を読み解く。

タイトルはちょっとチープな感じがするけど面白かった。
『大王家計略系図?』は最初の方にあっていいけど、『大王家計略系図?』があるのがP341と最後の方なのは、?に乗っている後の世代が出てきたとき、?がどこにあるのかわざわざ探すのがちょっと面倒。
『井上秀雄氏の研究では、古代の中国の人々には、倭人は江南地方・内蒙古東部・朝鮮南部・日本列島の四地域に住んでいる人々と認識されていたそうである。』(P21)倭、どういうつながりでそう認識されていたのか、海である程度活発に交易していたのかな。
三輪君逆討伐事件から穴穂部討伐の流れ、同じ著者の『推古女帝と聖徳太子』ではいまいちよくわからなかったが、こっちの解釈の方が分かりやすく納得できる。
『入鹿による山背大兄王殺害も、それほど確証のあることではなく、ほかに真犯人がいるのであるが』(P200)確証薄いのか、古代の話は色々な説があるから読んでいて混乱するなあ。
乙巳の変の後に大王についたのは、軽王子こと孝徳だからである。
 クーデターとは何か。現体制を覆すものである。
 では現体制・現政権とは何か。それは皇極女帝の政権である。
 もし、これまで語られてきている大化改新像が正しければ、悪人は蘇我氏だけなのであるから、入鹿・蝦夷を倒せば問題は解決するはずである。皇極が退位する必要はどこにもない。しかも、クーデターの首謀者が中大兄ならばなおさらのこと、その母である皇極を退位する必要は無い。もし、皇極が退位するならば、当然、クーデターの主役である中大兄との交代劇が展開しなければならない。
 ところが、現実には孝徳即位が実現している。
日本書紀』は、孝徳朝においても、主役はあくまで「皇太子」中大兄であり、孝徳を傀儡的存在として記述している。しかしながら、傀儡政権が成り立つには、か以来に祭り上げられる大王が実力の無い人物でなければならない。
 ところが、孝徳は実力の無い人物ではなかった』(P226)乙巳の変は、その後に即位した孝徳天皇(軽王子)が首謀者。中大兄王子、皇太子ではなかった。しかし孝徳の後、皇極が重祚して、中大兄が即位しなかったのは相変わらず分からんが。
『『日本書紀』が描く乙巳の変はほとんどが虚構であり、そのため記事には阿倍氏が登場しない。だが、軽王子がクーデターの首謀者ならば、実際には妻の実家で軍事氏族である阿倍氏の勢力を利用しなかったとは考えられない。
 入鹿殺害について、古人大兄は「韓人、鞍作臣を殺しつ」と述べている。書記編者はこの意味を、「半島政策のことによって殺害された」と注記している。皇極・古人大兄・軽王子・入鹿・阿倍内麻呂ら政府首脳陣が外交政策を議論していた会議の場を阿倍氏配下の者たちが警護と称して囲繞しており、会議決裂の結果、入鹿が殺害されたという状況が想定されるが、いかがであろうか。』(P247)「謎の豪族 蘇我氏」の中でどういう意味かよくわからないといわれていた一文が、孝徳首謀者説をとるとそういう意味に変わるというのは面白いな。