壬申の乱 天皇誕生の神話と史実

壬申の乱―天皇誕生の神話と史実 (中公新書)

壬申の乱―天皇誕生の神話と史実 (中公新書)

内容(「BOOK」データベースより)
六七一年十月、天智天皇の弟大海人皇子(天武天皇)は王位継承を断わり吉野に隠棲。翌月、天智の子大友皇子は大海人を討つべく五人の重臣と盟約を結んだ。天智後継の座をめぐる壬申の乱の発端である。天智は大友かわいさで大海人を疎外したのか。大友は絶えず後手にまわり敗れ去ったのか。王位継承をめぐる対立はなぜ大規模な戦争に発展したのか。通説を再検討し、古代最大といわれる攻防のドラマを再現、その歴史的意義に迫る。

「謎の豪族 蘇我氏」→「謎解き 古代飛鳥の真相」→「天智伝」と大体時代順に読んでいたので、それまでの時代の流れを直近で読んだから、「壬申の乱」が早く読んでしまえると思ったけど、最近読んだ歴史の本は読みやすい本が多かったけど、これは読むのにかなり時間がかかってしまった。
『当時の王位継承に何らかの原則があったとすれば、それは後世のように何大王の長子であるとか、何大王の直系の孫であるといった血統的な条件によるものではなかった。それは六世紀の後半以来、王族の範囲内において、世代・年齢といった条件を最優先にするものだったと考えられる。』(P5-6)しかし、天智は安定した王位継承のため世代・年齢重視の王位継承から特殊な血統を持った(自分と大海人の血を引く)皇子による王位継承への転換を構想した。その構想では、大友皇子は草壁・大津といった天智・大海人の血を引く皇子が大人になる前の中継ぎ天皇。本来大海人も大友擁立構想の不可欠な協力者で、賛成だったが変節した。天智の死の間際の大海人との対話の読み解きはすごい面白い。
考察は、本筋を簡潔にでも語り終えた後にして欲しかったな。というか大海人と大海人を味方した氏族のつながりの説明がやたら多いよ。
日本書紀」で大海人の吉野脱出で大友皇子に、騎兵を編成して直ちに大海人を追撃すべ死と提案した、「一の臣あり」と記されているのは、高市皇子だったのではないか、高市の提案だから大友は疑心を差し挟みその提案を却下したのではないか、というのは面白い。
最後にある『「壬申の乱」関連年表』と『「壬申の乱」人物事典』は今後壬申の乱についての本を読む機会があればそのときも役に立ちそうだなあ。