聖武天皇

聖武天皇 - 巨大な夢を生きる (中公文庫 な 28-4)

聖武天皇 - 巨大な夢を生きる (中公文庫 な 28-4)

内容紹介
仏教国家の範を聖徳太子に仰いで東大寺の大仏をつくり、白鳳の精神を伝統とする理想の君主国・日本の実現をめざした英主の生涯を辿った力作評伝。
内容(「BOOK」データベースより)
われは国家なり―巨像・盧舎那仏にわが身を投影し、その存在を宣揚した聖武天皇は、仏教国家の範を聖徳太子に仰ぎ、白鳳の精神を伝統とする理想の君主国・日本の実現をめざした英主であった。本書では、「大仏建立」を中心に捉え、「アウトサイダーの重用」「藤原官僚機構との戦い」「和歌の力の結集」などの視点から、まったく新しい聖武像を解き明かす。精力と財力のかぎりをつくして巨大な夢を生きた、天平の英主の情念に迫る、渾身の書き下ろし。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

最初の100ページは聖武天皇のほかにろくに人が出てこないからなかなか読み進めることができなかったが、そのあとは面白くて読みやすかった。
『元正朝には排除しようとしたが、聖武天皇は積極的に利用しようとしたのである。もっと正確にいえば、行基率いるアウトロウ的な集団の力を巨像実現に結び付けようという英断を聖武は下したのである。』(P108)仕方なく認めた、というイメージがあったので、そんな積極的な意図があったとは知らなかった。というか大僧正という地位は行基が史上初なのか。
『古来日本人が桜を熱愛してきたことは、だれも否定できない。奈良時代には梅を愛し、平安時代には桜に替わったという俗説は根拠がない。』(P129)梅と桜、俗説だったのか。
鑑真、「教学僧のおもかげをもたない。むしろ行基に似た民衆層の姿」で「集団を率いた行動的なリーダー」というイメージは、今までもっていなかったので、新鮮。
「第三章 官僚機構との戦い」で官僚機構=藤原、と聖武天皇が対決していたので、『条件が天皇から藤原氏に交代し、夢みる情念が強固な合理性にかわっているが、もし聖武がさらに意図を徹底させようとしたら仲麻呂が実現しようとした形になる。すくなくともふたつの意図、近代国歌の誕生と仏法の興隆は仲麻呂路線をはずれていない』(P304)藤原仲麻呂聖武の意図と外れていないというのは意外。