長崎を識らずして江戸を語るなかれ

長崎を識らずして江戸を語るなかれ (平凡社新書)

長崎を識らずして江戸を語るなかれ (平凡社新書)

内容(「BOOK」データベースより)
江戸幕府が、オランダ人を長崎の出島に強制移住させてから、日米和親条約が締結されるまで約二〇〇年間続いた鎖国時代。唯一、西欧との取引が許された長崎には、各藩から、数多くの志のある者たちが最新の知識や情報を求めてやって来た。平和な時代が長く続いた江戸期に花開いた数々の文化は、彼らが長崎遊学を果たし、各藩に持ち帰ったものだったのだ。江戸が、いかに長崎の影響を受けたのか。地方別「長崎遊学者名簿一覧」付き。


歴史の本でこのくらい読みやすい本を読むのは久々。
志筑忠雄についての話が色々と出てくるが、今までは「鎖国」という語をつくった人という印象しかなかったが。その他にも彼が作った造語として、「真空」「楕円」「重力」「加速」「弾力」「求心力」「遠心力」「頭痛」「熱」「風(邪)」「麻疹」など多数あるというのはすごいな。しかも、ニュートンを研究していたということにも驚いた。しかも、オランダ語の文保を論じた本に出会い『日本人としてはじめて蘭文法を集大成することができた。』(P47)というのもすごい、それまでいなかったことも驚きだけど。
『当時ヨーロッパでも、エレキテル(電気)の正体ははっきりとは分からないまま見世物にされていたが、その謳い文句が「患者の痛所から火を取り出す」というものであった。』(P110-111)そう考えると、平賀源内が見世物にしていたのは特にとっぴな考えでもなかったのね。
蘭学のことは「風雲児たち」で読んだくらいでしか知らなかったが、志筑忠雄みたいなすごい人物が出てたかどうか覚えていないくらいの感じでしか扱われていない、ということには衝撃。あとがきにもあるように江戸蘭学の人たちがルーツを長崎蘭学に求めず、新井白石蘭学の祖であるとしたことが現在でも影響しているということか、教科書でも新井白石によって、と書かれているようだし。改めて考えれば、「風雲児たち」でも長崎蘭学(とか通詞)を軽視した見方だしなあ。