百代の過客

百代の過客 日記にみる日本人 (講談社学術文庫)

百代の過客 日記にみる日本人 (講談社学術文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
日本人にとって日記とはなにか。平安時代の『入唐求法巡礼行記』『土佐日記』から江戸時代の『野ざらし紀行』『笈の小文』『奥の細道』まで、八十編におよぶ日記文学作品の精緻な読解を通し、千年におよぶ日本人像を活写。日本文学の系譜が日記文学にあることを看破し、その独自性と豊かさを探究した、日本文化論・日本文学史研究に屹立する不朽の名著。読売文学賞・日本文学大賞受賞作。

読んでみたいと思っていてすぐに、ちょうど文庫になって読むことができたのでの嬉しい。
1作ごとに紹介が数ページと短く区切られているのでさくさくと読むことができた。このくらいの厚さの本だといつも、読み終えるのにちびちびとしか読めず、半月とか一月とかかかってしまうことが多いのだが、2,3日で読み終えることができた。
『『多武峰少将物語』は、そのあまりにも物悲しい調子にもかかわらず、確かに私たちの胸を打つ。私が今まで読んだもので、出家した人間の跡に残された人々の淋しさをこれほど見事に伝えた記録は、他には考えられない。』(P107-108)「多武峰少将物語」今まで題名すら知らなかったが、面白そう。まあ、古文苦手だから読めないけど。
「成尋阿闍梨母集」『八十台の老女が、夢にも現にも脳裏から離れたことのない息子を主題にして――しかもほとんどそれだけを主題にして日記を書くというのは、世界文学史上、他に類例を見ない』(P113)この作品は気になっていたから紹介読めて満足。
「名月記」『かりにこれが、十三世紀のヨーロッパの詩人が書いた日記だとしよう。そうすると日本語の完訳はいうにおよばず、この作品の重要性をあげつらう書物や論文が、無数に出現することは必定なのである。』(P166)そんなこと言われると読みたくなるが、漢文で、日本語訳がないとなるとちょっとな……。
源通親『歌のほうでは定家のライバル、のちに後鳥羽上皇和歌所寄人の一人として、常にぱっとしない助言ばかりしていた人物である。』(P195)「やる夫 鎌倉」や「源頼朝の世界」では高評価だった気がするから、評価分かれる人物なのかな?それとも「ぱっとしない助言」というのは歌のこととか?
奥の細道」『この日記では、ただ一つの文章さえ、いつまでも脳裏に残るのはもとより、時と共に頭の中で膨れ上がり、やがていっぺんのエピソードへと発展してゆくのである。芭蕉のほかにこれが出来る唯一の詩人は、恐らくダンテであろう。』(P497)中世以降はどうも紹介聞いて面白そうに感じるの少なかったが、徳川時代に入っての芭蕉の作品についての説明は面白い。
江漢、最初に知ったのが「風雲児たち」であったから、翻訳を人にさせて、自分が訳したことにしているイメージがあまりにも強かったので、ろくな奴じゃないと言う印象だったが。「江漢西遊日記」の紹介の『『とはずがたり』この方、これほどあからさまに己自身の姿を描いた日記作者は、誰一人いなかった』(P554)という文章を見ると、ちょっと江漢のことが気になってきた。