戦場の一年

戦場の一年 (白水uブックス―海外小説の誘惑)

戦場の一年 (白水uブックス―海外小説の誘惑)

内容(「BOOK」データベースより)
第一次大戦のさなか、オーストリア国境のイタリア軍は、はてしない塹壕戦を戦っていた。無能な将軍の無謀な作戦で次々に倒れてゆく兵士。にもかかわらず使命感に燃え、勇敢に戦闘に立ち向かう主人公の姿は、読者に感動を与えずにはおかない。戦争の悲惨さをあますことなく描いた戦争文学の傑作。

佐藤亜紀さんのサイトだかどっかでこの本を知り、興味を持ったので購入。だけど、たぶん一年くらい積んでいたがようやく読了。
読むまで小説と勘違いしていたけど、第一次世界大戦の回想録。
第一次大戦のころの話は(というか戦地での出来事についての本をろくに読んだことないから)知らないから、どういう戦況での話かはよくわからないが、レオーネ将軍はまるで喜劇の話でも読んでいるのかと思うほどの愚かな行いをして、しかもその行いに全く後悔していなく見え、そのくせ悪運が強いという本当に小説の中の登場人物のような人間だ。悪人というようには見えないが、彼がいるせいで(工兵に鎧を着せてみたりなど無益なことをさせて)味方の無意味な損害が増えている。そのために、ラバから振り落とされそうになった将軍を助けた人間が『将軍を助けるなんて!おまえはオーストリア人に買収されていると白状するんだ!』(P71)等といわれて殴られるレベルの嫌われよう。
騎兵隊中尉、自分の度胸の証明のために、敵が監視している銃眼に少し身をさらすつもりだったんだろうが、その少しの間で撃ち殺されるという悲喜劇的な挿話は印象に残った。
そして、のちに同じ銃眼を将軍に見ることを勧めて、敵に殺してもらおうとしたが、そのときだけ何故か、敵が監視の手をやめたように、撃ってこずに謀殺が未遂に終わり、そのすぐあとに再び銃眼を開いて硬貨を穴に近づけたら、その時には監視の手が戻っていて銃弾が飛んできたシーンでは、レオーネ将軍の悪運は偶然でなく、なにか所以あることではなんかと勘ぐりたくなるほどだ。しかもレオーネの後任もまたアレなのがね……。
そんな戦場で、小鳥の本を読む従卒の存在には癒しを感じるよ。