江戸時代

江戸時代 (中公新書 (476))

江戸時代 (中公新書 (476))

小説・映画・演劇が作りあげた江戸時代のイメージは、歴史学の研究成果と合致しないものが少なくない。また膨大な史料や事実の中で、全体像を見失った歴史書もある。あるいは、近代社会が前の近世社会をことさら古く見せようとした傾向もなくはない。本書は、二五〇年あまり内外ともに戦争のなかった時代、しかも今日の一般庶民大衆の歴史が直接始まった時代の全体的特徴を、捉え直す。江戸時代イメージを一新する通史である。
(江戸時代|新書|中央公論新社 より)

『江戸時代とは日本がはじめて世界史にとりこまれ、これに”鎖国”という形式で対応(開国)した時代であること』(Pv)
大阪城攻め、秀吉の金が狙いの一つ。今まで、豊臣方は一大名で、よくあんなに抵抗できるほどの人間を雇っておけたなと思っていたが、そうした資金力があったからか。
鎖国後の方が、対外貿易額が増えているということは知らなかったので驚いた。外国船の寄港地が多いほうが、なんとなく貿易が活発という印象があるからねえ。
新田開発が急激に進行したため、刈敷の採草地の不足がおこり、下肥が重要になってきた。「採草地の不足」ということは考えていなかったので、目からうろこ。
天守閣はシンボル・タワーのような存在で、『最初から天守閣をつくっていない城郭も少なくなく、また火災などで焼失したあとは再建しないところが多かった。』(P86)そういう「火災などで焼失したあとは〜」というのが多かったという理由もあって、保科の天守閣を再建しないという案も受け入れられたのか。
江戸時代、女性人口低かったイメージあったが、18世紀前半には30%台前半、中盤には三割中盤ではあるが、1798には42.5%、1832には45.47%、1854には48.74%と徐々に上昇していって、幕末時期になるとほぼ半々になる。

生類憐みの令、「明らかに行きすぎた悪法であるが」とカッコつきながら、「あながち非難ばかりもしていられない点もある」とあるけど、やっぱちょっと古い。これについては最近の本(僕が読んでいる本の中なので偏向はあるにしても)は結構、肯定的な(文治政治への転換、武士の意識改革の一環として)評価をしているのが多いので。
『柳沢・田沼両人とも、その収賄汚職談は、いわばためにするものか無責任な世間の噂話をよせ集めたもので、たとえば贈った側の大名家文書などのなかには、いままでのところそれを裏づける史料は見つかっていないのである。というよりもむしろその反対の史料さえ出ているありさまである。』(P203-4)個人的には、田沼は「風雲児たち」で、柳沢は「やる夫たちと学ぶ江戸時代」でそうした汚職政治家という見方を振り払っているのでいまいち新味がない。いや、ここは、35年前の本なのに全然古びていないということに驚愕するべきか。