日本人の叡智

日本人の叡智 (新潮新書)

日本人の叡智 (新潮新書)


内容(「BOOK」データベースより)
先達の言葉にこそ、この国の叡智が詰まっている。仁愛を決断の基本とした小早川隆景、一癖ある者を登用した島津斉彬、時間と進歩の価値を熟知していた秋山真之、教養の正体を見抜いていた内田百〓(けん)、学問を支えるのは情緒と説いた岡潔…。約五百年にわたる日本の歴史の道程で生み出された九十八人の言葉と生涯に触れながら、すばらしい日本人を発見する幸福を体感できる珠玉の名言集。

1人につき見開き2ページで収まって読みやすい。戦国〜現代の人物を扱って、年代順に並べてある。
はじめにの著者の話で『毎日のように、薄暗い書庫の中に入り浸り、汚い床に座り込んで、ほこりのなかで古書をむさぼり読む。食べるものを食べず寝るのも忘れて、この陶酔の時間に、はまり込んでいってしまったが為に、あるときは書庫のなかで倒れ、とうとう図書館から救急車で病院に搬送されてしまったこともある。しかし、これがすきなのだから仕方がない。』(P10)とあるが、そんなにまで本に夢中になれるというのはうらやましいなあ。
江村専斎、はじめて知る人だが、『「名と利は両方とも好むな。ただ名を好む者は利を好む者よりはましだ。名を好む者は自制するが、利を好む者はなんでもやるから」といった。』(P29)とあるのを見て、考えたことのなかったことだが、利を好む者の方が(行動原理が)理解しやすいけど、名を好む者の方が良いというのは、確かにそうだな。
中根東里、清貧。というか、なんか貧乏であるということに偏執している感じもしてちょっと怖いくらいの迫力がある人生だ。
堀勝名、維新の100年前に熊本藩で「行政と司法の分離」を実現したり、刑務所を作って受刑者に仕事させて、出所時に更正資金として与えた。というのは、すごく現代的でそんな人が維新のずっと前にいたんだと吃驚した。
日柳燕石、最近読んだ「世に棲む日日」でも名前が出てきたので、こうして思いがけず続けざまに名前を見かけるとちょっと嬉しい気分になる。ところで、こうした気分とかのことはなんと呼べばいいんだろ?シンクロニシティでもなさそうだし、うーむ。
西園寺公望、『大臣に人を得ないかぎり、次官以下、どんなに人材を集めてみたところで、大したことは出来ッこないよ』(P162)最近どこか(web上の新聞かブログ記事だったかも忘れたが)で、政治の記事でトップが置物でもいいという風潮を批判して、トップに人材を置かなければいけないということを主張していた話を読んだので、現代だけじゃなく、そんな前から大臣に人がいなかったのかとちょっと暗澹たる気分になるね。
尾崎行雄、『政党モドキの利害集団しか出来ない。』(P182-3)、頼まれたから、義理があるからで投票することを批判して、『各政党の政綱政策をまじめに研究し、自分の希望するような政治をやる政党はどれか、よくよく見極めてから投票すること』(P183)と本(『民主政治読本』)に書いた。政治家も有権者も当時からちっとも進歩してないなあ。