ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー

ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー (電撃文庫)

ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー (電撃文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
「奪うことだけが正義なんだよ」「なぜ奪われる哀しさがわからないの」地下貧民街に生まれ幼い頃から暴力と略奪の中で孤独に生き、地上で安穏と暮らす人間を憎んできた十七歳のジェイファ。地下を脱出した彼は中流平民街に上がると同時に一軒の豪邸に盗みに入る。しかし冬瀬陽月という少女に遭遇、捕縛されてしまう。豪邸の持ち主である冬瀬一郎は、ジェイファを許すかわりにある条件を突きつける。それは陽月と組み『ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー』という、魔術師と戦士の二人一組で相手ペアと戦う競技のプロになることだった!?第18回電撃小説大賞“銀賞”受賞、新たなファンタジックアクション登場。

久しぶりにライトノベルの新刊を読んだ、特に新人賞の作品なんて読むのいつ以来だろうか、いつ以来もなにも通産でも数えるほどだろうけど(笑)
カードが高額でやり取りされるということで、遊戯王みたいな世界観の話なのかなと思って読んでみたけど、普通にバトル・スポーツ競技(コロシアム)系統の話で、カードの要素はそんなにないなあ、カードは魔法の巻物みたいな扱い。
バトルのルールは正直、そうした長々とした説明台詞は読んでも時間ばかりかかってろくに理解できないので、ちょっと読み飛ばしちゃった。
というか、この本は全体的に読み飛ばし気味というか、一文一文読まずページ全体をザッと見て筋をメインに早く読むということを試して読んだ(そしてザッと見て、面白かったところは改めて一文をしっかり読むというやり方で)が、いつものように一文ずつ読むと読んでいるときよりも、例えば読んでいて気分が重くなるようなシーンや読んでいて恥ずかしくなるようなシーンに過剰に感情移入する間もなく次のシーンに移れるので、それはいい!というかこうした読み方の方が個人的にはあってるのかもな。こういう読み方でも、僕では一時間に120ページ位が限度だと思うけど(最近僕は、読むのが遅くなった、それを別に惜しんではないけどね)。それ以上のペースだと読み落としてるものがないか怖くてペース上げられないし、シーンの展開に頭の中がおっつかなくて、楽しめないだろうから。

主人公の性格が捻くれているのはわりと好き。ツンデレ、というかマンガなどでいる、不良だけでいい奴という感じの人。最後の陽月との会話のように、自分の元の意見に固執せず、反省できて、かといって相手の意見を全面的に受け入れるでもなく、自分の意見を修正できる柔軟性、そしてそれを口に出せる率直さはいいね。
よくいるタイプの主人公のように、理不尽な形で一度ペースを握られ流されたら、そのままずっと流されてその人物に唯々諾々と従ったり、純粋無垢(愚直)であったり、非常にお人よしな人格であるよりもずっと好感が持てる。

「太陽と月の気まぐれ」、限定的すぎるし、賭けの要素高すぎる。いったい誰がそんなカード作ったんだw
木崎の台詞『キミ……ハルの悪口は許すよ。あたしも言いたいことある気持ちはわかるし。でもさ、そういう侮辱は見過ごせない。本気でそんなナメたこと言ってんなら、ぶちのめす』(P161)侮辱って、そう考えるのが一番自然なのに、そうやってキレるのは理不尽だぜ。と一瞬感じたが、感想を書く段で改めて読むと、ハルが差別していると、あたかも事実を見透かしているかのように語っているということに怒ったのか。単にそうじゃないか、という感じの疑いとして語られたのなら怒らなかったかも?と思うと別に理不尽ではないのかな。
木崎、妙に達観していると言うか、もう自分のことを主人公二人のいる世界(俗)とは外にいると考えているからなのかな?あるいは、助言者と言う位置に自分を置かなければ、嫉妬などの感情が出てきてしまうから意識的にかも知れないけど。
五条・レビンペアとの会話、この種の会話は、読者への説明・種明かしでお約束とはいえ、こういう会話はやっぱちょっと不自然に感じちゃうなあ。
五条、レビンをあっさり見捨てるなんて、ドライねえ。
一郎、エピローグまで読むと陽性の偽悪家って感じの人だねえ。