天魔 剣客商売 4

剣客商売〈4〉天魔 (新潮文庫)

剣客商売〈4〉天魔 (新潮文庫)

出版社/著者からの内容紹介
音もなく小兵衛の前に現れ、「秋山先生に勝つために」、八年ぶりに帰ってきたとうそぶく役者のような若侍の正体は? 次々と道場を襲い相手を一撃のもとに殺していく魔性の天才剣士と秋山父子との死闘を描く表題作。愛弟子に〔なれ合い試合〕の許しを求められ、苦衷を察して許可を与えた小兵衛が、皮肉にもその試合の審判を引き受けることになる「雷神」など全8編。シリーズ第4作。


このシリーズ、続けざまに読んでいたから、どうも1巻ずつの印象が薄くて、感想に困るなあ。
「箱根細工」横川彦五郎、大治郎への感謝を口では述べていたにせよ、実際に自分の子が斬られたのでは複雑極まりない心中だったかと思う(武士としての心では、そういうことすら切り捨てるとかいうのでなければ)と、臨終のときの心中を考えるとやりきれないなあ。
「天魔」大治郎の戦い方が、小兵衛のやろうと思っていた戦い方と同じということは、親子だなあ、と思うべきか、彼ら親子の力量があってこそだが、千代太郎のような剣士を相手にするにはあるいみ正攻法の作戦だったと思うべきか。後者にせよ、二人が最適解を選んだことは驚嘆に値するが。
「約束金二十両」平内太兵衛、立身の欲がない天才剣士。この位、腕の立つ剣士が世に出ていない、名を知られていないとはなあ。
「鰻坊主」の最後で、大治郎、三冬、飯田粂太郎の3人揃って、毛まんじゅう(シモネタ)とはなんだろうと疑問に思って、頭をひねっているのには笑うわ。しかも結局三冬と連れ立って、父にそれはなんだろうと聞きに言ったという顛末にも可笑しみを感じる。