花神 下

花神 (下巻) (新潮文庫)

花神 (下巻) (新潮文庫)

周防の村医から一転して官軍総司令官となり、維新の渦中で非業の死をとげた、日本近代兵制の創始者大村益次郎の波瀾の生涯を描く。
(ホーム > 新潮文庫 > 書籍詳細:花神〔下〕 より)

『私は防長二州のなかでも周防のうまれでありますが、周防はまだしも空は美しくありませぬ。周防の山々は美しい。長門の萩まで参りますと、あれほど美しい空の下にある御城下は、六十余州にありませぬ』(P23)郷土愛の元がそうした空などの自然なのか、それとも郷土愛があるから、欲目で空まで美しく見えるのか、どっちだろ?
岩倉具視、私欲のあまりない陰謀家。だから、陰謀かといっても、あんまり嫌らしく見えない、というか個人的にはマイナスイメージ無いわ。
余談が多いけど、そうした細かい挿話が多いので、全体像がよく見えるというか、それがあるから、他の司馬さんの幕末小説よりも視野が広い(というより明瞭な)感じ。あくまで個人的な感想に過ぎないけどね。
花神」を読んではじめて、長州が革命的云々という話について、実感が得られた。
薩長が江戸を手に入れた後も、まだ長州は古金百万両がのこっていた、というのは尋常じゃない財力だ。あれだけ精力的に活動して、まだ余力があるとかなんか笑えてくるほどすごいわ。
海江田、こういう阿呆が蔵六を殺したかと思うと、もう死んでいる歴史上の人だが殺意が沸くよ。こういう人間嫌いだわあ(好きな奴もいないだろうが)。
『かれのおどろくべきことは、いよいよ彰義隊討伐をやるという二日前からひそかに新聞をつくっておいたことである。原稿は予定稿であった。しかし予定稿どおり戦況が進み、一字の訂正も必要としなかった。』(P401)すごいな!

西郷が反乱を起こした場合のため、若年の公家、西園寺をかつごうとしたとか、そういう(ある種政治的な、というか、技術・知識的でない仕事)こともできるのか!!
蔵六、最後の仕事は西郷のクーデター対策というのにもビックリだ。