供述によるとペレイラは……

供述によるとペレイラは… (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

供述によるとペレイラは… (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

内容(「BOOK」データベースより)
ファシズムの影が忍びよるポルトガルリスボン小新聞社の中年文芸主任が、ひと組みの若い男女との出会いによって、思いもかけぬ運命の変転に見舞われる。タブッキの最高傑作と言われる小説。

久しぶりに再読。以前読んだときはよく意味が読み取れないけど、雰囲気はなんとなく好きだという感想を覚えた。まあ、今回読んでも大して読み終えた感想みたいなのが変わらないのには、変わらぬ自分の読解力のなさ(と成長のなさ)を実感してしまい、ちと泣けたが。

『世論なんて、アングロサクソンの連中が発明した代物さ。イギリス人とアメリカ人のものさ。/(中略)/世論の力、なんていいつづけてきて、あいつらの体制がわが国にそだったと思うかい。この国には、あいつらの国にある伝統がないんだ。』(P55)以前読んだときは、ヨーロッパの国でもこういうものがあるのかと思って、日本でも散々言われているようなことだから、少し驚いた記憶がある。

『彼はバルザックの『オノリーヌ』のこと、そして悔恨について考えていた。じぶんもなにか、悔いなければならないことがあるような気がしたのだが、それがなにかは、よくわからなかった。とつぜん、彼は、アントニオ神父にあって話したくなった。彼になら、じぶんにはなにか悔むべきことがあって、それがなんであるかはわからないながら、じぶんが犯した罪を悔やむことに、郷愁をおぼえているのかもしれない、などと、打ち明けることができそうな気がした。いや、悔恨という考えそのものが、ただ気持よかっただけかもしれなかった。』(P97)僕は語彙が少ないからこういった気分のことを簡潔に一語二語で表す言葉を知らないが、すごく共感できるような内心の感情だ。

『自然よりも、思い出に惹かれているのかもしれません』(P99)こういう思い出を想起させるような若々しさのようなものがが、亡き妻の写真に向かって愚痴ってはいるもののロッシにやけに好意のある態度を示している理由の源泉かな。

カフェ・オルデキアでカルドーソ医師を待っているときに、給仕からスペインの状況が聞いたが、その状況説明聞いても何年だかさっぱりわからんなあ。歴史に詳しい人ならいついつだ、と気づけて(その時代の空気みたいなのを想起して)、このペレイラのストーリーと歴史的事項をよりはっきり繋がりを見出せるのだろうなと思うと、なんか悔しい感じ(笑)

ロッシの死、前も思ったがやけにあっさりだな。まあ、意図的にそうしているんだろうけど。以前読んだときは、「供述によると」というタイトルから、なんとなく捕まって吐かされているのかと思っていたが、よく考えたら、ロッシがこんなにあっさり殺されているのに、そんな小説一冊分の供述ができるほど尋問の時間をとることは状況的に考えづらいから、ずっと後にインタビューかなんかで話しているのかな?