フランス中世史夜話

フランス中世史夜話 (白水Uブックス)

フランス中世史夜話 (白水Uブックス)

内容(「BOOK」データベースより)
騎士道、聖者伝説、海底に消えた都、魔法を使う法王の話など、興味深いエピソード、あまり知られていない逸話を、中世史料とくに年代記に即して語る。赤々と燃える暖炉の傍らでの一夜の楽しい語りのごとき中世史譚の数々。


教会とかに関連するエピソードが多く、それは時代的に宗教が力を持っていた時代だから仕方ないといえばそうだけど、キリスト教はあまり詳しくないし、それが中世のとなるとなおさらなので、どうもいまいち頭の中にはいってこなかった。あと、読む前に本のタイトルだったりから、なんとなく、実際に小説に出てきそうな小話みたいなものの集まりを想像していたが、悪霊だったり伝説だったりと、思っていたより大きなくくりでの話が多くて、実在の小さな(愉快な)事件や話が、ほとんどなかったので、そうした読む前のイメージと実際読んでみてのイメージの差異があったから、それもでなおさら頭に入ってこなかったということもあるかも。

1008年、120冊「もの」蔵書を持つことで知られていた僧院というのが書いてあって、いかに10世紀末に西欧の知的水準が下がっていたのかが良くわかるわ。

ザンクト・ガレン僧院プラン」、建物配置図の隙間にびっしり細かい書き込みがあり、『回廊の入り口には「ここにて外来者と談話し、洗足礼をおこなう」』(P68)とか書いてあるのは、すっごく読んでいて面白そう。個人的には想像力(と知識が)大分足りないので、そうした建物の使用の用途まで書かれている地図というのは、眺めているだけでも楽しそうで、このプランの書き込みが訳されている本があったら読みたいし、他にも似たようなのあったらそっちも読んでみたい。

院長シュジュを書いた美術史家パノフスキーの評伝、『稀代の傑物でありながら、絶えず動き回り、なんにでも口を出し、書くこと、話すことが大好きな、そして少々自慢へ着のある、機嫌のよい小柄な僧の姿である。』(P97)いいキャラだし、面白そうな評伝。「視覚芸術の意味」という本に収録されているようだから、読んでみようかな。

東方の三博士、マタイ伝には人数は書いていないが、既に4世紀頃までには3人であることを疑うものはいなくなっていた。人数がかかれていなかったということや4世紀という早い段階で3人に定まったということにはちょっとした驚きがあった。

14世紀半ば、薬礼は成功報酬だった(というか死んだらもらえなかった)というのは知らなかったわ。黒死病、『西欧全体では総人口の半数近くが失われたらしい。』(P202)すさまじいな、黒死病というのについて今まで語は知っていても、とくに関心を払っていなかったが、西洋において文化や思想に強烈に影響を与えたことだといま実感できた。このような認識はごくごく当たり前なことなのかもしれないが、世界史勉強したことないからなあ。