三銃士 上

三銃士 上 (角川文庫)

三銃士 上 (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
17世紀のパリ。都で一旗あげようと、意気揚々と上京してきた青年剣士ダルタニャン。3人の銃士、アトス、ポルトス、アラミスにひょんな行き違いから決闘を申し込まれるが―。固い友情で結ばれた4人の男が、悪玉リシュリユー枢機卿らの企みに挑む。手に汗握る冒険活劇の名作を、躍動感溢れる名訳で贈る。


角川文庫で新訳(だか改訳だか新装版だか再文庫化だかは知らんけど)したときに買って、もう2年以上積んでいたがようやく読み始めた。実際読み始めてみるとめちゃくちゃ読みやすくて驚いた。これほど何も考えずに読めて、ただ単に面白い小説というのは、初めてだ。キャラが正直あまり共感できるタイプでなく心理もあまり描かれていない(描かれても地の文で神の視点からで、キャラ自身の独白めいたものはない(と思うw))のは逆にストーリーが動くことだけに集中できて良いなあ。キャラが好みだったり共感できると、逆に窮地に陥ると、読むのが苦しくてしんどくなってしまうからなあ、自分でも難儀なことだとは思うが(笑)まあ、このぐらいキャラを突っ放して読めるようなキャラとの距離感はいいね!

あと、小説とは直接には関係ないけど、騎士が金に困るといった世知辛さや自分たちの直接の上役くらいにしか従わないところ、それとこれも騎士が金に困る世知辛さに含まれるだろうが、金欠のとき食事に招待されると友人まで連れていくなどの食事事情は「やる夫は青い血を引いていたようです」をなんとなく想起させられて、あの作品も中世の空気感を巧みに掴んでいたのだなと感嘆する。だから、この本を読んで改めて「やる夫は青い血を引いていたようです」が良い作品だということを改めて実感する。

ダルタニャン、銃士たちの訓練に驚いていたから剣の腕はそれほどでもないのかな?と思ったら、実際に戦うシーンで、かなり強くて吃驚した。

アラミス、「ポルトスとさる公爵夫人との艶聞」を話した後に、「この私以上に口のかたい者はいないから安心さ」って、説得力ねぇな(笑)

ボナシユーとダルタニャンとの会話での、ダルタニャンの「あなたは私の大家さんでしたか」というどことなく間の抜けた台詞には、今でもコメディの一場面として出てきそうなシーンには笑いを誘われる。

ボナシユー夫人、ダルタニャンに口説かれていたときにはかたくなに拒んでいたのに、ずいぶんあっさりと離別の決意がつくなあ。まあ、彼女にとってはそれくらい、この一事(王妃に頼まれた敵地ロンドンへの密使)は重要なことなのかな。

「この近衛銃士隊では、いつから願い出もしない休暇が許可されることになったんだい」「代理で願い出てやる友人がいるようになってからだ」という台詞の応酬には、こうした気の聞いた台詞回しは好きだなあ。自分には決して思いつかないし、そういうユーモアのある切り替えしできないから憧れるわ。

ロンドンへの道中、仲間が欠けるのが思いがけず早くて笑った。

『アトスのためにひと突き、ポルトスのためにひと突き、アラミスのためにひと突き』(P350)こういうのはどこにでもある台詞回しなのか。それともある意味これが元ネタなのか(だったら面白いんだが)。