明治天皇 4

明治天皇〈4〉 (新潮文庫)

明治天皇〈4〉 (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
日露戦争で、明治天皇が旅順陥落の勝利に示した反応は、敗北したステッセル将軍の名誉を保てるよう指示することだった。「大帝」と呼ばれた開明的君主の心にあったのは「平和への願い」だったのである。日本が韓国を併合、極東支配を強化しつつある1912(明治45)年7月30日、明治天皇崩御する。卓越した指導者の生涯を克明に追い、明治という激動の時代を描き切った伝記文学の金字塔。毎日出版文化賞受賞作。

 4分冊の「明治天皇」もようやく読了。歴史の本でこんな長いものを読むのははじめてだが、文章が非常に読みやすかったので一度読んだらすいすいと読み進めることができた。非常に読みやすい明治時代の通史でした。
天皇を崇拝していると見せて実は天皇の意思を一顧だにしない男達に操られていることに、天皇は憤慨していたとも考えられる』(P65)そうしたエピソードがあるから、全然政治に関与していなかったと言うようなイメージがあるのかな?
 この本を読んで、伊藤博文明治天皇にすごく信頼されていたことをはじめて知った。
 日露戦争、『金子によれば、すでにルーズベルトは会議を有利に運ぶために日本は直ちに樺太を侵略すべきである、と忠告していた』(P168)おお、意外。というか、樺太を侵略することが旗から見てもベターな選択だったのね。
 高宗、第二次日韓協約の重大な危機にいたって威厳と有機を示す、っていうのを読むとなんだか最後だけ格好良くなる漫画のキャラクターみたいだ(笑)。しかし、本当に幕末で欧米諸国にやられた恫喝外交を踏襲しているな。しかし、それから50年たっているんだから、時代遅れという感がするが。いや、その50年の間に欧米の外交スタンスが変わってないか知らないから、単にイメージだが。
 朝鮮の貴族って何?と思っていたら、そういや両班ってのがあったね。「へうげもの」で知ったがすっかり忘れていたよ(苦笑)。
 天皇、乃木の陸軍参謀総長昇進は拒否したが、『自身の孫が学習院で乃木の指導を受けることを期待していた節がある』(P364)ということだから、軍人としての能力には疑問を抱いているが、単に嫌っていたわけではないのね。
 『陸軍演習を統監することは好きだったということとは裏腹に、天皇は心底から戦争が嫌いだったという事実である。』(P424)これを読んだときはじめはちょっと不思議に思ったが、現代でも軍事(周辺のエピソードや装備・技術)は好きだが戦争は嫌いって人結構いるんじゃないと思いなおした。
 『天皇最大の功績は、かくも長きに渡って君臨したことだった。』(P425)例として、ヴィクトリア女王を挙げているが、あとオーストリアハプスブルク家の人(名前が出てこない、ググって見て調べてみたらフランツ・ヨーゼフ一世か)とかもそうだよね。
 解説に、明治天皇の和歌を『効果的に資料として使っている』(P458)とあるけど、和歌’(や詩)は全然わからないから、和歌から読み取ることができたら、明治天皇に対してもうちょっと深い理解を得られたと思うと、そういうのが読み取れないのは残念だ。