そうだったのか!現代史

そうだったのか! 現代史 (そうだったのか! シリーズ) (集英社文庫)

そうだったのか! 現代史 (そうだったのか! シリーズ) (集英社文庫)

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「日々のニュースや、私たちが生きている現代のさまざまな出来事を理解するためには、その少し前の歴史を知る必要があるのです」(「はじめに」より)。本書は NHK週刊こどもニュース」キャスターの池上彰が、大学生、新社会人に向けて第二次世界大戦後の歴史をやさしく解説した「現代史の入門書」だ。ただし入門書とあなどることなかれ。「中国と台湾はなぜ対立する?」「イスラエルが生まれ、戦争が始まった」「『ひとつのヨーロッパ』への夢」など、今日のニュースの背景を解く全18章は、「今さら人に聞けない」社会人にとっても救いの連続である。大戦後に生じた数々の争いを陰で操る大国、核戦争の縁に立った人類の危機…。現代史ゆえに、当時の軍事作戦が詳細かつ正確に記述されていたり、当事者の語った言葉そのものが書かれている点も興味深い。
高校の歴史の先生を思い出させるわかりやすい語り口に加え、数多くの報道写真と図説で視覚に訴える作りは、まさにニュース・キャスターならでは。小見出しを多用したコンパクトな文章、人物や用語解説のミニコラムも便利。ただし地図に関しては、必要以上に大きかったり、不要と思われるものもあるなど工夫がほしいところだ。巻末の「もっと知りたい人のために」では、役立つ本やビデオが豊富に紹介されている。単なる専門書の羅列ではなく、おすすめスパイ小説、自伝、戦争取材ものなど、各章に関連してジャンルにこだわった選がうれしい。(岸田晴子) --このテキストは、 単行本 版に関連付けられています。

 「そうだったのか!日本現代史」のはじめに(だったか?)で、あわせて読むことを推奨されていたのと、池上さんの著作を読むのは「日本現代史」がはじめてだったが、すごく読みすかったということもあり、読んだ。
 「はじめに」でよく質問をされるもので挙げられていた、『ベルリンの壁って、東西ドイツの境にあったんじゃないの?』(P6)というのは、この本を読むまでずっとそうだと思っていたよ。実際には、東ドイツ領土に囲まれている立地で陸の孤島で、ベルリンの壁東ドイツの仲にある東西ベルリンを分断するものだった、というのはこの本を読んではじめて知ったよ。西ドイツと西ベルリンの間は、鉄道と高速道路一本で結ばれていた(鉄道や高速道路は東ドイツ領内では通り過ぎることしか認められていなかった)。
 もともとカストロ社会主義者化は議論の分かれるところで、アメリカの対応(亡命キューバ人に軍事訓練させて侵攻させようとしたり、キューバの飛行場を爆撃したり)が社会主義へと追いやる。
 文化大革命、ひでえ無秩序、というか紅衛兵反革命のレッテルを張って殺したり暴力を振るうって、例えば学生運動で行動していた連中に大義名分を与えられ、そいつらを取り締まることができなかったらこうなる、ということを示す例だと思うと、日本でもそんなことをやりかねない連中がいたことを思うとぞっとするな。
 大躍進政策。鉄を増産するために手作りの小規模な溶鉱炉を山ほど作って、鉄鉱石が足りないので、今ある鉄を溶かすというわけのわからん状況に。『一日に十八時間も溶鉱炉で働いている農民たちに、田畑で働く時間はありませんでした。』(P202)莫言の「築路」の両立来る係りのおっさん(名前忘れた)の過去に出てきた情景はこのときのものか、とようやく気づく。
 スターリンの「農業集団化」や毛沢東の「大躍進政策」、その失敗を秘匿されていたため、ポル・ポトは「農業集団化」を進めて失敗。共産主義国の間でも情報がまったく共有されておらず、何年も前に起こった事実を知らないということは恐ろしいな。現代では考えられないことだから、たった(?)数十年前の出来事でも本当に別世界の観がある。
 ベトナムカンボジア侵攻、結果として虐殺を止めたわけだから、許される?という問題が新たに出てきて、『後に「ある国の内部で反人道的行為が大規模に行われている場合、国際社会は人道的介入が許される」という理論に道を開く』(P269)そして、それが旧ユーゴの内戦にNATO軍が介入する根拠となった。