隠れ蓑 剣客商売 7

剣客商売〈7〉隠れ蓑 (新潮文庫)

剣客商売〈7〉隠れ蓑 (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
盲目の武士をやさしくいたわる托鉢僧―旅の途中で出会った、年老いた二人連れが何故か秋山大治郎の心に残った。江戸に帰った大治郎は、偶然試し斬りされかかった件の老僧を助け、二人が二十八年におよぶ仇討ちの敵同士であることを知る。人知をこえたその絆の不思議さを描く「隠れ蓑」。小兵衛が小金持ちの隠居と見られて盗賊に狙われる「徳どん、逃げろ」など、シリーズ第7弾。


 このシリーズも感想を書くのが遅々として進まんな。読みやすくて、感想を書く前に次の巻次の巻と読み進めてしまうから、どんどん感想を書くものが溜まっていってしまうな。
 事件にかかわったときのみ書かれるから、事件に関係する知り合いの描写は事件のときしか書かれないからどうもご都合主義感があるな。今更だし、時代小説(というか活劇物というべきか?)はそんなもんだ、といわれれば返す言葉もないけどさ。
「春愁」
 徳次郎、博打を半分楽しみで、とあったのにはあら?と思ったが、最近の心境の変化とすぐ後に書いてあって納得。大治郎が徐々に緩くなっていくように、他のキャラも緩くなっても仕方ないか。いい意味で遊びをおぼえて、人格が丸くなっている(自身が緩くなったから他人への許容範囲も増える)ということかねえ?
「徳どん、逃げろ」
 女房の名前も知らない老夫婦。妻が唖で文盲であるからといって、それで夫婦仲も悪くないというのはちょっとよくわからんし、なれそめも気にかかるよ。
「隠れ蓑」
 盲目の浪人と老僧、仇と敵討ち。ねじくれながら騙しながら(仇が浪人を)、真にお互い思いやっている関係は素敵だ。この関係だけで、このシリーズの中で屈指に好きな短編になる。
「決闘・高田の馬場」
 味噌汁を鍋ごと笊にいれて井戸の中で冷やすとあるが、もしこぼれたら大惨事になりそうで他人事だけどなんか怖いわ(笑)。
 決闘前の緊張感はよかった。結果はああなったけど(笑)。
 裏舞台でとりあえず大事にはならずにすんだのに、その終結を知らないため、弟子のために決闘自体を台無しにしようとする秋山小兵衛と大治郎、今回ばかりは結果として無意味な奮闘、まあ、秋山父子とて全能でないということが表された短編。