弾左衛門とその時代

弾左衛門とその時代 (河出文庫)

弾左衛門とその時代 (河出文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
弾左衛門制度は、江戸幕藩体制下、関八州の穢多身分を支配し、下級刑吏による治安維持、斃牛馬処理の運営を担った。明治維新を迎え、13代弾左衛門(弾内記=矢野直樹)は反差別の運動を起し、賎称廃止令によって被差別身分からは脱するが、同時に職業の特権的専制を失う。時代に翻弄されたその生涯を凝縮する。

 もっと江戸時代の被差別階級のこと全般にページが割かれているかと思って、購入したが、実際は、歴代の弾左衛門あるいは幕末の最後の弾左衛門のことがほとんどだったのが、少し想像と違った。
『穢多身分の商いとしては、火打石や付木など火に関するものがおおく、これは陰陽五行の考えによっていると思える』(P15)他にも灯心など、江戸時代の火関係の職は、そういう身分の人だったのか、知らなかった。
 元々、皮革技術のため、武器・防具を必要とする武家と強い関係をもっていたが、三台家光が鎖国してから、各地の農村に基盤を置くようになった。
 穢多でなくなった人を、近代差別の関係性に組み込んだのは、農民の視点。いちばん身近にいて無抵抗な旧穢多村が憂さ晴らしの対象となった。身近で無抵抗な人間がそういう対象となるのは、中世欧州のユダヤ人みたいに、やるせないがありふれたことなんかね。
 部落地名リスト、そういうのがあって今でも公表されていないというのは、北海道旧土人保護法がいつまでもあったのと同じように、今となっては無意味なことだと思うからそんな隠し立てするのは酷く変に思える。
 弾左衛門は、本来は町奉行の灰化が役目で、非人たちの監視役(?)だったという説は、ちょっと興味がそそられる。
 現在まで続いていると考えられる、明治政府の窮民対策、日雇会社『慈善のいやみと低賃金がからみあい、余計者ふうに扱われながらその実、最も必要不可欠な仕事を担わされたりする』(P130)「現在」というのがなにを指しているのかいまいちわからん、現在の問題点も実感できるか否かは別として知っておかなきゃいけないから、そうしたのも勉強しなくちゃなあ、でもなにで勉強すればいいのかわかんないが。
 歌舞伎役者、元は弾左衛門支配下にあったが、二代目市川団十郎のときに支配下から脱した。