フリーター、家を買う。

フリーター、家を買う。 (幻冬舎文庫)

フリーター、家を買う。 (幻冬舎文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
就職先を3カ月で辞めて以来、自堕落気侭に親の臑を齧って暮らす“甘ったれ”25歳が、母親の病を機に一念発起。バイトに精を出し、職探しに、大切な人を救うために、奔走する。本当にやりたい仕事って?やり甲斐って?自問しながら主人公が成長する過程と、壊れかけた家族の再生を描く、愛と勇気と希望が結晶となったベストセラー長篇小説。

 やる夫スレ(まとめサイト)で読んだことがあって(序盤は重苦しそうなので何話かとばして、途中からだけど)、それがすごく面白かったので、文庫化したら絶対飼おうと思っていたので購入。
 子どもの頃の町内の家ごとをターゲットにしたイジメ、主人公が楽天的すぎて、姉に指摘されるまでそんなことされていたということすら気づいていなかったから、まだ陰鬱になりすぎることもないが、こうした村八分的なものドロドロと底流に流れる悪感情を読むのは苦手だわ。
 姉が親父を糾弾しているシーンではシリアスのはずなのに、その縁縁に連なる言葉の最後に「(以下略)」があるので笑えてくる。
 最初に就職した会社のおかしさに対して、その後も『俺のほうが正しいのだから、おれの理屈が通るべきだ。』(P144)と考えていたのは間違いだったことに、主人公が気づくシーンで、「べき論」は愚かだと思って自分も嫌っていたはずなのに、対会社で考えるときは再就職活動中の主人公が考えていて誤りだと悟ったその考えを、僕自身も抱いていたことに気づいて、ハッとした。というか、それと同時に、「翔ぶが如く」で西郷が「正しければ通る」そういう理想の政府を自分たちは目指してきたのだし、その自分たちが作った政府なのだからそうであるはずだ、そうあらなければならないと思い、そうだと信じて政治的寝技を使わなかった、ということを愚かだと感じていたが、現代の会社をそうした政府と置き換えると、そうして依怙地になって、なりふりかまわず、手段を問わないといったことをしなかったのも理解できるようになった。それなら自分に瑕疵なく、相手(会社・政府)が悪いことになって、誰にも非難できないだろうからね(非難してきたとしても、説得力に欠けるもので、自分の心にわずかでもうしろめたさを感じさせるようなものにはなりえないし)。
 就職してからは主人公の見せ場がたくさんあって読むのが楽しいなあ、大好きだ。父親は、やる夫スレでのAAとツンデレキャラのイメージが強かったので、あまりイラつかずに読むことができた。というか、多くのキャラをAAのイメージで当てて読んだので、キャラクターのイメージを普通に読むよりも固めて読むことができた。