翔ぶが如く 3

新装版 翔ぶが如く (3) (文春文庫)

新装版 翔ぶが如く (3) (文春文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
―西郷と大久保の議論は、感情に馳せてややもすれば道理の外に出で、一座、呆然として喙を容るるに由なき光景であった―。明治六年十月の廟議は、征韓論をめぐって激しく火花を散らした。そして…西郷は敗れた。故国へ帰る彼を慕い、薩摩系の士官達は陸続として東京を去ってゆく―内戦への不安は、現実となった。

うーん、1巻ずつ買っているからあいかわらずのスローペース。しかし、いっぺんに買うと他のものが読めないからなあ。歴史小説、もっと量を読みたいのだが、中々ペースが上がらないなあ。まあ、「翔ぶが如く」のように何冊もあるのを読んでいるからというのもあるけどさ。
 15日の廟議に木戸が欠席したことは、薩長の対立となって明治政府が2つに割れることを防いだ。そういう意味で『木戸の欠席というのは明治政府維持のためには最大の政治行動であったといえるかもしれない』(P30)木戸、維新後あまり活躍していないというイメージがあったが、ちゃんと重要なところではちゃんとした判断下しているのね。愚痴っぽくなった以外は劣化していないのかな。少なくとも西郷のように幕末から大きく変質していない。ただ、考え抜かれた最適解が欠席だから、どうにもイメージがよろしくないが(笑)。それに15日の廟議では征韓論に決定しまったから、尚更。
 その15日の廟議をなんとか覆そうと三条が走り回った結果、精神的に参ってしまい人事不省に陥った。今まで仮病だとばかり思っていたけれど、ドイツの医師であるホフマンが終日つきっきりになっているのだから、どうも仮病ではないようだ。そのあと伊藤博文が上手くこの奇貨を使いきったというところか。
 岩倉、西郷・江藤・桐野・板垣・副島に自宅に押しかけられ、責めあげられても、最後の最後一番肝要なところで意見を貫き通して、変節しなかったのは流石だ。
 黒田、適材を見つけてそれに任せ、自分はその人物が仕事をしやすいような条件を作っていく、こういうタイプの人は好き。とそこだけ読んで思ったが、自分の妻を酔って斬殺(?)して、それが罪に問われなかったのが誘因になって、大久保が暗殺させられた、にもかかわらず官を棄てなかったというのは、人間として基本的な欠落を感じさせる。と司馬さんがいっているが、たしかにそれはあまりにも……。
 西郷、人をただで働かせないという持論で、いちいち金を与えていたが、使用人たちはそのことを喜ばず、過分に思い、むしろ気味悪がっていた。というのは、たしかに習慣がないところでそうするのは不気味だし、奇人に見られてもおかしくないな。