神の棄てた裸体

神の棄てた裸体―イスラームの夜を歩く (新潮文庫)

神の棄てた裸体―イスラームの夜を歩く (新潮文庫)


内容(「BOOK」データベースより)
イスラームの国々では、男と女はどのように裸体を絡ませ合っているのだろう―。「性」という視点からかの世界を見つめれば、そこには、性欲を持て余して戒律から外れる男女がいて、寺院の裏には神から見放された少女売春婦までがいる。東南アジアから中東まで旅し、土地の人々とともに暮らし、体感したあの宗教と社会の現実。戦争報道では分からない、もう一つのイスラーム報告。

 文章や構成は小説っぽい感じで読みやすいが、実際した行動は、多少自分の行動を露悪的に書いているとしても、場所が日本でなら普通な反応でもその土地ではずれているし、手を差し伸べようとした人に下手な希望を与えて、自分が求められると手ひどく拒絶するというのは、ちょっと酷い。感情に従って善意を与えようとして、それを求められたり、思っていたよりも重かったりすると、ふいに我にかえって突っぱねるとか、可哀想だ。というか、著者のちょっかいによって状況が悪くなったようなエピソードが結構多い(特に最後の五章)のはいかがなものかと。それと、何度もそうした失敗を繰り返すってことは、案外人は、行動を、自重できないと言うか、変えることができないということだな。それとも、他人事なのであまり反省していない(あるいは今度こそ、と思って何度もそういう方向にあえていった)という可能性もなきにしもあらずだが。
 それでも1つ1つのエピソードの締めが小説のようにびしっと決まっていて素敵。少なくとも文章家としては優れていると感じるし、個人的な趣向にもぴたりと合う。
「兄弟の秘め事」お互いの為に、相手に知られないよう自分が体を売って稼いでいることをかくしているという関係性は泣ける。以前に石井さんの別の著作読んだときにも出ていたが、ここでも体重計屋というのが出てきているが、一体誰が計るのか、何のために存在しているのかわからない職業だよなあ。
「水の祈り」ヤブだが善人の薬師の話。これはいいなあ、特に前半の変な薬の実験台になって、幻覚が見えたり、全身がしびれたり、勃起が止まらなくなったりとなっているところが(笑)。