怪笑小説

怪笑小説 (集英社文庫)

怪笑小説 (集英社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
年金暮らしの老女が芸能人の“おっかけ”にハマり、乏しい財産を使い果たしていく「おつかけバアさん」、“タヌキには超能力がある、UFOの正体は文福茶釜である”という説に命を賭ける男の「超たぬき理論」、周りの人間たちが人間以外の動物に見えてしまう中学生の悲劇「動物家族」…etc.ちょっとブラックで、怖くて、なんともおかしい人間たち!多彩な味つけの傑作短篇集。

 一番初めの短編「鬱積電車」を読んでまず最初に思ったことは、星新一ショートショートみたい、ということ、まあ、つまり、好みじゃないということですが。うーん、なんで星新一ショートショート、嫌なんだろうと考えたら、人間の心理の嫌な部分を露にすることが多く、人のやさしさとかが描かれることが少ないからかな。そして、ハッピーエンド好きだが、そういう結末もほとんど期待できないというのも苦手な理由に含まれると思う。
 個人的には、語り手に感情移入して読み進めることが多い(長編だと、読み進めるうちにその度合いが低くなることも多いが、短い作品だとどうしてもそうすることが多い)ので、その語り手が嫌なやつだったり、語り手が責められているような内容だと辛いので、読んでいて面白いとはどうしても思えんのだ。
 「しかばね台分譲住宅」、未来にその風習が残ったというオチだが、この作品の時代が発祥だとすると、発生の経緯は残されていると思うがな。あんなことやっていて、死体が見つからないとはとても思えない。まあ、その未来のレポーターが勉強不足だといわれれば、ああ、そう、としかいいようがないが。
 「動物家族」、今まで我慢していたことが、他人には大したことのないことで、今までのと合わせて沸点に到達して、キレてしまうというのがうまく描かれている。直前のキレる契機になった出来事だけ見ただけ、それをとってキレやすい若者云々と理解不能な存在として片付けるの、ではわからないことがあるというのがよくわかる。