少女不十分

少女不十分 (講談社ノベルス)

少女不十分 (講談社ノベルス)

内容(「BOOK」データベースより)
少女はあくまで、ひとりの少女に過ぎなかった…、妖怪じみているとか、怪物じみているとか、そんな風には思えなかった。―西尾維新、原点回帰にして新境地の作品。

 冒頭ちょっとだけ読んだ後、しばらく積んでいたが、ようやく読み終えることができた。
『僕が十代において、人として大切な感覚を、育て忘れてしまったことは確かなのだから。』(P27)おう、ぐさぐさと刺さる刺さるw
『年々、僕の心配性は増すばかりで、実際、三十路に達する今現在では、出版社に原稿を送るためにとじた封筒を、最低三度は開けて、原稿に毀れがないかどうか確認するくらいだ。』(P50)こうした不安感には、僕は出かけるとき、財布や鍵、PASMOなどを忘れていないか駅に着くまで何回も確認してしまうので強く共感することできる。
『3時間で1冊の本を読み終えて』(P55)なんかこうして短時間で1冊の本を読むことができるというのを聞く(見る)と何故だか尊敬してしまう。僕は読むのが遅い上、集中力に欠けるため、1冊の本をそんな短時間では容易には読めないからな。
『のんびりとしたペースで歩くだけなのだった。本人はせめてもの抵抗のつもりで、しかし現実的には、小学生に歩幅を合わせる形で。』(P83)歩幅w、なんという逆効果。
 U、変な計画性(その後の展望)のない脅迫をするのは、子どもらしい思慮のなさが伺える。しかし、挨拶の返事を求めたり、ご飯を分けてやったりすることと誘拐をやるのが自分の心の中で矛盾せずに並立しているのにはなんでだろうな。と一瞬思ったが、親からいわれた判断基準のままの行動しているのだから、そもそも誘拐するがわになるとは思ってもみないことだろうから、そちら関係の判断基準(自身の行動への規制)がないということかな。
 限界まで我慢して、脱出する試みをせずに誘拐・監禁されたままでおこうとする主人公も大概わけがわからんな(笑)。
 給食を持ちかって、食べるという食事のシーンで、Uが現実味を帯びた存在になった。しかし、食事が給食となると、なんともいえない居た堪れなさみたいのを感じるのは何故だろう。他のエピソードでもUがライトノベルにありがちな超人的な少女というのではなく、現実にいるような少女であることがわかってくる。