魔法科高校の劣等生 8

魔法科高校の劣等生 (8) 追憶編 (電撃文庫)

魔法科高校の劣等生 (8) 追憶編 (電撃文庫)


内容(「BOOK」データベースより)
中学一年生の司波深雪は、自分の兄が苦手だった。一体何を考えているのか分からないから。家族でありながら使用人同然の扱いを受けているにもかかわらず…全く意に介さない。兄と目が合えば、深雪の口からは、不機嫌な声が出てしまう。そんな妹に、『ガーディアン』として完璧に付き従う兄。そこには一切の油断もミスも無い。そして、一切の『感情』も。理不尽だとは分かっていても、深雪は兄に苛立ちをぶつけることしか出来なかった。自分の、ただの我が儘だと分かっていても。今とは全く異なる、達也と深雪の関係と、その心の中―。三年前、沖縄で起きた『出来事』によって、二人の心と、その運命が、大きく変わっていく。

 風間と真田、イラスト初めて(だよね?違っていたらすまぬ、記憶力に自信がないから、確信がもてないが)。イラストは自分のイメージと違ったが、いいね。風間にはまだ慣れないけど、次にイラストが出てくるまでにはたぶん慣れているよ(たぶん)。
 風間、もうちょっと顔が四角く色黒な感じで、しかめっ面だと怖いが笑うときは口を大きく開けて、子供のようにその笑いに含むものがなくみえて純粋に楽しんでいるような幹事を受ける、といったイメージしていたが、謹厳実直なサラリーマンというイラストだ。うーん、僕は表現力が貧しいから上手くいえないんだが、なんとなく部下から「大将」と呼ばれて慕われるようなタイプの外見かと思っていた。ああ、ここまでかいてようやくわかった、もっと豪放な外見かと思っていたんだ、傭兵団の団長みたいな風な。まあ、変り種の魔法師の集団の長であるということと『大天狗』という二つ名から勝手に連想していたイメージだけど。
 真田も、ちょっとマッドっぽい印象があったから、目が大きく愛嬌があり、童顔というほどではないがしぐさなどから子どもっぽく見えるような人物かと思ったが、さわやかで真面目そうなイケメンだな(ちと神経質そうに見えるが)。まあ、その外見で性格悪いというのも中々いいなあ。
 深雪と達也がカラーのイラストで描かれているシーンは、文章からして、褐色の日焼け止めクリームを塗って散歩している場面だと思うけど、肌の色が白いままなのか、むう日焼けした(ように見える)深雪のイラストもちょっと興味があったのだが。しかし、達也がまだ子どもだということが、web版において文章のみで読んだときよりも如実に感じることができる、そして、こんな子ども時分に既に戦闘経験を積んでいて、そしてこの頃よりももっと幼い頃から拷問じみた(そのものの)訓練をやらされているという事実に痛ましさを感じる。
 桧垣上等兵、深雪たちに絡んでいたが、その理由がさっぱりわからんなあ、子どもをからかって、子どもが怯える顔をみるのが楽しいと感じたり、相手が硬直したり脱兎の如く逃げる様を見て喜ぶというSの人なのだろうか?
 61ページの深雪の、髪を後ろでまとめていて、「えっ」と驚いて悲しそうに少し眉をひそめている、イラストが可愛い。
 警備の責任者から事情を聞きたいと呼ばれて、そんな気になれなかったから、後でたずねてもらうことにした、というのはこういう態度を自然にとれて、そして許されるのは流石に上流階級の人だなと感じる。領海内に侵入されたというわりと重大なことで証言することを後でいいと許されて、なおかつ大尉がわざわざ聞きにきたというのも、それ故にだと思うし。つか、軍は彼女らが四葉ないし四葉関係だと推測できて(あるいは、わかって)いるのかな?それとも単に名家だろうと想定されたから、後で面倒なことがないようにとりあえず、そうしているのか?
 『私と達也君で訊きたいことには答えるといったんですけど……』(P94)これやその後、一堂に会した時の雰囲気から尋常な家族関係ではないなということは解るだろうから、その後、達也が基地に行くときに、深雪と達也との関係を通常の兄妹関係と誤魔化そうとしても、わりと今更感が漂うな。まあ、そんなところから、深雪は風間が達也を魔法師であることを見抜いたことを不思議に思って、そのことを風間に尋ねたときに、風間が『ところで何故そのようなことを気に掛けるのですかな?』といったというのは、そのときだけじゃなくて、それ以前の潜水艦について聞きに来ていたときから違和感を覚えていたから、そんな反問をしたのかね。そして、なにかしら特殊な事情があるとわかっているからこそ、やたら強い理由を聞いて、完全に納得できる理由が返されたわけでもないのに、それ以上詮索しなかったのかな。
 風間、桧垣上等兵が子どもに殴り倒されたエピソードを知っていたというのは、中々耳が早いな。風間は、堅物っぽい(真面目そうな)外見だけど、隊の中で親しげに接せられている上官なのかな。しかし、達也たちに桧垣上等兵が謝罪したときの『謝罪を受け容れます』(P101)などの台詞を見ると、達也も今は大分柔らかくなっているが、まだまだこの頃はお堅いねえ。そういう態度がいかにも人造的と見られて、現在も続く四葉内で(青木のような馬鹿に)侮蔑されることの遠因の一つになっているのかねえ。
 達也が、グラム・デモクリッションをわざわざ使った理由はなんだろう、風間たちが信頼できそうだから懐に飛び込んだのか、特に使うなといわれていなかったから頓着せずに使ったのか、それとも負けたくないという子どもらしい理由かな、何にせよ深雪にいいとこ見せたいという気分も多分にあっただろうけどw。
 桜井や深雪たちを一旦は殺せたということに、魔法師って、非魔法師でも殺せるんだ!ということを強く実感した。いや、深雪にしても深夜にしても桜井にしてもかなり上位の魔法師だろ、深夜は身体が弱くなっていて、深雪はまだ子供だといっても、今まで強い魔法師が非魔法師にこんなにあっさり殺されるシーンを見たことがなかったから、ちょっと衝撃を受けた。まあ、結局生き返ったんだけどね(笑)。
 暴言はいていた例の男がターゲットだったのか、彼は別に現世からログアウトしても良かったのにとちょっと悪いことを思ったが、結局達也が再成を使わなければいけなくなっていたかもしれないから、まあ、余計な手間をかけさせなかった分いいのかな?
 達也が敵軍を徹底的にやっつけようとするが、何でわざわざ深雪から離れたのかは、web版での初読時は単に活躍シーン作るためかな、と思っていたが、書籍版で再読して気づいたが、よく考えずとも、シスコン兄が弾で身体に穴を穿たれ血痕や肉片が飛び散っている妹の姿を見て激昂しないはずがないから当然のことだよね(笑)ということに気がついた。
 『わたしは、お兄様に、どう報いればいいのだろうか。/何をお返しできるというのだろうか。/今のわたしはこの命すら、お兄様からいただいたものだというのに』(P204)おお、深雪、改めて読んだら実に宗教的な悩みだなw。最後の『お兄様のご意思は絶対なのですから』(P262)もそうだが、宗教的な崇拝感情を抱いているのかね、深雪は。現在はもっと穏やかな兄弟としての情も培ってきているだろうけどさ。
 深夜の『あの子はあれで、常識に拘っているところがありますからね。親に愛情を抱けない、なんて、つまらないことで悩む必要はありませんから』(P201)との台詞があるが、この台詞には自分が、子供に愛情を抱けないことで悩む必要はない、自分たちは四葉なのだから、と自分に言い聞かせている面もあるんだろうな、きっと。そう思うと、以前は冷たいなと思っていた台詞が、急に人間臭く感じてくるな。その後の『子どもに愛情を抱けない、お母様の苦悩が、垣間見えた気がした』(P201)というのは、以前は深雪が、母に対しても感情を入れているだけだ(母対兄の対立と見て、兄に肩入れせずに)と思っていたが、そうした深夜の悩みを正確に見てとれたということなのね。まあ、達也の不幸な境遇に対しての母としての苦悩でなく、何も感情を抱けないことに対する自分への苦悩であるから、達也に肩入れしている一読者としては単純に好感を持つことはできないがwまあ、単純に嫌いと切って捨てることはできなくなったけどさあ。
 『「理論上可能だと分かっているだけで実際にやってみたことは無いはずだけど、そこは何か考えがあるのでしょう。あの子は、目端は利く方だから。」/どうでも良さそうな言い方だった。/それでも母親が息子を自慢しているのだ、と桜井は思った』(P243)好意的に見ているからそう感じるのか、本当に心の一部でもそう感じているのか謎だなあ。
アンタッチャブル
 あとがきによれば、追憶編の前文として書いたものということだが、編集者のアドバイスで後に回し、確かにそのほうがいいと作者も納得している。後にまわした編集者の慧眼には脱帽、この短編で四葉の姉妹と七草弘一に対する見方がだいぶ変わったもの。
 真夜の背景へヴィだなあ、そして、七草弘一は真夜の元婚約者だったのか!自殺しないようにレイプされた記憶を消すためとはいえ、一旦今までのすべての経験の記憶を知識記憶として移し変えられてしまった、ということが現在の真夜の人格形成に影を落としているのだろうなあ、そのせいで非人間的な臭いが濃厚なのかなあ、いやそれはただ単に真夜の登場シーンが少なく、達也を応援しているから、好印象をとても持てない、ということから個人的に勝手に抱いているイメージだけど。
 記憶の改変について、姉妹の父は『深夜、お前が決めろ。お前がどのような結論を出しても、その責めはすべて私が負う』(P271)といっていたが、その後すぐにその国に対する戦争をして結局死亡した(しかも武運拙くということではなく、死ぬのが予測できていた)から、結局真夜に対する負い目や真夜が責める相手が、深夜の一身に集中してしまったのはなあ、結局責めをろくに負ってないじゃねーか、と感じてしまうなあ。
 我々は奴隷ではないと怒りをあらわに、自分達の感情を私怨だと断じながら、それでも敵の国に対する戦争を決意し、一族のトップの面々が一族の誇りのために死んでいったのは非常に格好いいと思うのだが、その裏には達也のような人間がいるということがわかっているから純粋に感動できないなあ。達也みたいな人間に対する、四葉内での偏見(侮蔑)が生まれたのは当主が真夜になった以後なら、真夜ってやっぱり糞だわ、ですますけど。
 この短編を読んでいると、七草弘一に対する同情の念を自然と覚えてしまう、だって恋人を汚され、永久に失ったのだから。そして、以前の真夜と現在の真夜の性格が違ければ違うほど、以前の真夜を理想化する反面、現在の真夜に対しての苛立ちを抑えることができずに、四葉に対して敵対的になってしまうのは人間として仕方がないな、と感じることができる。
 『真夜はこのときの傷が原因で生殖能力を失った』(P286)ということだから、達也って実は九島と真夜の子供なんじゃないか、と想像していたのだが、ううむ違ったか。まあ、そう想定していた理由は、九島と達也の間には何らかの繋がりを知っていると風間がいっていたし、従兄妹なら深雪と結婚できるから、最終的に深雪エンドになったらいいなあ、という願望からだけど(笑)。それでは九島と深夜の子供で、深雪とは種違いということなのかなあ?まあ、深雪と達也が結婚できない関係であるならそんなのどうでもいいかw。